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生存権裁判コーナー

人として生きるために

生活保護申請

“若いから”と5回却下

人間の尊厳守る判決を

阪南合同法律事務所 半田みどり弁護士

 大阪・岸和田生活と健康を守る会の会員が2009年11月10日、「稼働能力が未活用」として、生活保護申請が却下されたのは違法だと岸和田市を相手取り、その取り消しと損害賠償を求めて、大阪地裁に提訴しました。岸和田「生健会」は「岸和田市の生活保護申請『却下』の取り消しを求める裁判を支援する会」を立ち上げ、勝利に向けて奮闘しています。裁判の概要や意義などを、半田みどり弁護士に書いていただきました。

 原告は、当時30代後半の男性で、派遣切りで失職した。その後、学歴(中学卒)や職歴がハンディとなったのか、何件面接を受けても落とされた。お金も食糧も尽き、家賃も公共料金も払えなくなり、2008年5月に岸和田市に生活保護申請に行くも、「健康で若いから」と門前払いにされた。
 6月に、岸和田生活と健康を守る会に相談に行き、以後、5回にわたり申請をするが、却下され続け、6回目でやっと開始された。その間、ガスを止められ、水のシャワーを浴び、パンの耳やもらったお米で食いつなぎ、家も追い出された。
 このような生活の中で、就職の面接に申し込んだり、ハローワークにも通ったが、仕事には就けなかったり、内定まで取れたのに、最終的には断られた。09年11月、却下処分の取り消しと損害賠償を求めて、提訴した。
 これからいよいよ、証人・当事者の尋問(じんもん)が始まる。原告側からは、元職安所長や大学教授の証人申請が採用された。異例の採用に弁護団は驚きつつ喜んでいる。

稼働能力・意思ありでも就労できない現実

 本件の争点は、稼働能力の活用と保護の補足性である。生活保護法4条の保護の補足性の規定は、稼働能力層に対する生活保護を阻(はば)む根拠として行政に利用されてきた。彼らの解釈の根拠となるのが、悪名高い林訴訟高裁判決(97年)である。原告勝利の地裁判決を覆(くつがえ)し、「稼働能力も稼働の意思もあっても、就労の場が得られなければ、稼働能力を活用していない」「努力すれば就労の場は得られるはずだ」として、路上生活だった原告を保護から排除した、極めて冷酷な判決が、保護行政の場において憲法・生存権保障にも勝るルールとして利用されてきた。原告はその犠牲になったのである。

裁判官は持たざる者の苦境・苦悩を理解して

 本件は、保護行政、ひいては、日本の社会を変える裁判になって欲しいと思う。原告は、貧困・差別、あらゆる負を幼少から背負わされ、労働者を使い捨てにしたり、あくどいビジネスをする企業にいいように利用されてきた。
 裁判官には、持たざる者の苦境・苦悩、それを利用する者の悪辣(あくらつ)さに思いを致して、一人の人間の尊厳を守る判決を期待している。それに向け、ますます弁護団としても気の引き締まる思いである。

(2012年10月28日号「守る新聞」より)

 
   
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