「消費税をなくす東京の会」の「税と社会保障を学ぶツアー」(4月)に、東京・練馬と大田の会員が参加しました。訪問したのはイギリスのロンドンとデンマークのコペンハーゲン。外国の実情と感想を綴(つづ)っていただきました。
消費税の最大の誤解は
「欧州(ヨーロッパ)は消費税が高いから福祉が良い」
東京都練馬区 杵渕(きねぶち) 智子(77)
イギリスは、付加価値税(消費税)17・5%の国で、食料品は非課税、医療費や学費は無料です。15歳以下の子どもの衣服や文具、遊具(一部課税)は非課税です。「将来を担う子どもたちの成育(せいいく)に税金はかけない」なんて、すばらしいです。
仲間の1人が体調をくずしロンドンの公立病院で休日診察を受けたのですが、「医療費は外国人でも旅行者でも無料です。会計窓口はありません」にビックリさせられました。
福祉政策の財源は、所得税と事業主が負担する医療保険料などが77%を占め、消費税は12%。社会保障は消費税でまかなわれているのではないのです。
消費税率は25%で物価は高いけれど
デンマークの空港でロンドンに向かう乗り継ぎ時間に500ミリリットルの水を買い、コーヒースタンドで紙コップのコーヒーを飲みました。日本と同様、すべてに消費税がかけられ、税率は25%。水が日本円で374円、コーヒーは400円くらい。物価は高いと感じました。
でもデンマークではまず、国民の中に食べられない人があってはならない、「健康で、楽しく働き、学び、家族を大事にして生きる」が大前提です。医療費・学費が無料、労働者の最低賃金は時給2200円、子ども手当も子2人分で家族4人の食費がまかなえるほど手厚く、モットーは「胎児(たいじ)から墓場まで」。
「税金は私の貯金通帳」と国を信頼
消費税25%は確かに高いです。しかし、デンマークの国民は「人生の保障」がされ、安心して生活できることに、「税金は私の貯金通帳」とまで言い、国を信頼しています。
一言で感想を述べるなら、「デンマークって、国が丸ごと“生活と健康を守る会”の役割を果たしているんだ」ということでした。
税のしくみの基本は
「納めた税金は国民の暮らしに使う」
東京都大田区 伊藤 悦子(70)
消費税が始まって20年、「外国に比べ日本の5%は低いから上げたい」と政府・財界は言っています。外国はどうなのかを実感したくて出かけました。
税のしくみは国の成り立ちや国民の考え方で違いますが、「納めた税金は国民の暮らしに使うのが基本」です。デンマークの最低賃金制、労働時間は守る、最低年金制度、失業保険は長期給付、医療費・教育費無料、憲法25条があっても、ないに等しい日本では考えられません。
貯金しなくても老後も安心して
貯金はしなくてよい、生命保険はかけなくていい、医療費や教育費の心配はなし、老後も安心して暮らせます。
デンマークでは、高齢者の住宅や施設を見学しました。若い世代が高齢者と一緒に暮らしていません。高齢者が子どもに頼らず暮らしていける、子どもも独立できる住宅・生活環境のようです。
日本の「老人憩(いこ)いの家」のような市の施設は、ビリヤードやパソコン、読書室もあり、洋服やパン作りなどは指導員もいて、65歳から95歳までの方が好きなことを楽しんでいました。日本のようにお仕(し)着(き)せのプログラムではなく、1人ひとりが大切にされています。
知りたかった路上生活者対策
ロンドンではスーパー前で、コペンハーゲンのチボリ公園でも路上生活者を見ました。イギリスでは郵便局から生活保護申請ができるのに、「生活保護制度や路上生活者対策は?」と気になりました。ガイドもそこまで踏み込まず、私にとっては課題が残った旅でした。
(2010年9月19日号「守る新聞」) |