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軍隊のない国・コスタリカ 子どもも憲法を語る国 “教育によって平和を守る” 《ガラス絵作家》児玉房子さん 岩手県生連 「第6回女性のつどい」講演より

 10月3日の岩手県生連「第6回女性のつどい」で、ガラス絵作家・児玉房子さんが講演されました。生活と健康を守る会のこと、軍隊のない国・コスタリカ、親の介護、沖縄・伊江島でのことなどたくさん話された中から、コスタリカと「会」について紹介します。

 自分たちの力ではどうにもならないこと、それは戦争です。戦争は絶対になくせないのか、「いや、そうじゃない」と思い起こさせてくれたのが中米のコスタリカです。コスタリカでは、10歳くらいの子が「僕たちの国は武器を持って戦いません。軍隊を持っていません。憲法があります」と言うのです。私はビックリして、5回行って調べました。

国民を戦争で死なせない そうするのが政府の責任

 日本で平和憲法が施行された1947年の2年後、コスタリカは軍隊を廃止しました。紛争地域の人口約400万人の小さな国が、どうして60年間も平和でいられるのか。コスタリカは「国民を1人でも戦争で死なせないようにするのが政府の責任」と言い、「我々の国は武器を持たない。戦争をしない」と、全世界に発信しました。
 そして、「教育によって平和を守る」と、軍事費を教育費に回しました。子どもたちは小学校を出るまでに憲法を体得(たいとく)し、子どもも「憲法違反」だと訴えることができます。八百屋のおばさんでも、「軍隊があったら、とっくに攻められていたよ。軍隊なんか、いらないよ」と言います。
 「命を大切にする」という基本的な考え方がある。死刑も1882年からありません。
 「コスタリカのテーブル」という言葉があります。当事者同士を呼び、真ん中にコスタリカが立ち話し合う。戦争の「火消し役」を買って出て、中米7か国がみんな平和になりました。武力によらず、どちらも納得する解決ができる人間を教育でつくったのです。

戦争がないだけが平和か コスタリカの3つの平和

 コスタリカでは、「戦争がないだけが平和ではない。平和には、(1)自分の平和、(2)他者との平和、(3)自然との平和の3つがある」と言います。
 うつになったり、自分は価値のない人間と思っている人は、「自分の平和」がない。人を愛し愛される、友情もあるという心の平和も必要です。暴力をなくし民主主義で、対話で仲良くしていく「他者との平和」。それには、自分の気持ちをちゃんと伝えられなければなりません。「地球温暖化で島が沈む、水が汚れて飲めないというのが平和ですか」と、 「自然との平和」を教えます。
 日本では仕事がなくて自信をなくし、人を愛せなくて結婚しない、そんな若者がふえています。本当の「平和」をこれから築いていかなければならない。それを教えるのは、やっぱり教育ですね。

生活が苦しいとき“国の助け”はあたりまえ

権利を言える人になろう

 私は20代のとき、東京の東村山に住んでいました。夫は鉄骨関係の仕事で、独立してすぐ大けがをしました。私は小さな子どもを抱えて働けない。生活と健康を守る会の人が、生活保護のことを教えてくれました。
 「本当に困ったときは国に頼むしかない」と思っていましたから私は生活保護を受け、支給日にも堂々と受け取りに行きました。でも、今思うと、若い私をまわりの人はどう見ていたのでしょう。
 人は見かけで見てはいけないと思いますね。元気でしっかりしている人が生活保護を受けていても、きっと何か事情があると思わなくちゃいけない。

「女だから」と言った区役所

 40代のときに離婚して、荒川区三河島のアパートに1人で住みました。貧しい人が多い町で、ここでも生活と健康を守る会に入りました。
 ここで知り合った戦災孤児の原島信子さんは、水商売で働いてきたのですが難病になり、お金もなくなって区役所に行きました。何回も行って、何とか生活保護を受けられましたが、「あなたみたいにきれいな人は、女だから何とかなるだろうと言われた」と、原島さんは荒川「守る会」の集会で泣きながら訴えました。
 その年の年末、アパートの火事で彼女は亡くなりました。やっと、心から自分の苦しさを話せる仲間が見つかったところだったのに。
 私はそのことを、「岩手日報」に1年間連載した「ガラス絵雑記帳」に書きました。

顔を上げて堂々と言おう

 どんなに一生懸命働いていても、自分が悪いことをしたわけではなくても、人生には「生きていけないとき」が来ます。そういうときこそ、国が助けるのはあたりまえだと思います。
 元気なときは税金を払って、国のために働いています。正々堂々と、「私は困っています。生かしてください。家族も助けてください」と言うのは、私たちの権利です。
 顔をしっかりあげ、自分たちの権利を言える人になりたい。そういう人をみんなで助ける、これが生活と健康を守る会だと思います。


〈こだま・ふさこさん〉1941年東京生まれ。70年に日本美術会附属研究所を卒業。83年からガラス絵を描き始め、スペインやルーマニア、ユーゴ、オーストリアなどで研修。92年から5回コスタリカへ。95年に岩手県遠野に移住。2005年から『ガラス絵の宮沢賢治』全10巻のガラス絵制作。著書に『ガラス絵に魅せられて』『コスタリカ賛歌』『女たちの遠野』など

 【ガラス絵】 ガラス絵は、板ガラスに油絵の具で描きます。普通の絵で一番最後に描くものから描き始めます。児玉さんは貧しくてキャンバスが買えなかったとき、捨てられているガラスを見て、これに描いていこうと決めたそうです。

(2010年11月7日号「守る新聞」)

 
   
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