鹿児島の出水(いずみ)市生活と健康を守る会の竹添(たけぞえ)榮(さかえ)さん(73)は、長年、水俣病(みなまたびょう)による体調不良に苦しんできましたが、このほど水俣病の補償金が支給されました。しかし出水市は不当にもこの補償金を収入認定し、生活保護を打ち切りました。竹添さんは、この処分(しょぶん)は不当だと、鹿児島県に審査請求(しんさせいきゅう)を起こしました。
竹添さんは「私は若いころから、水俣病の影響で手足がしびれ、心臓病など身体の不調に苦しんできました。そのため、昨年5月、水俣病の特別措置法(そちほう)にもとづき、給付金の申請をしたところ、昨年の11月11日に、一時金210万円が支給されました。すぐ市役所に知らせたところ、市役所の担当者は「必要な電化製品を買ってもいいですよ」と言われましたが、詳(くわ)しい説明もなく、生活保護が打ち切られてしまいました」と話します。
補償金は国と企業の“償い”
竹添さんの妻は、水俣病の患者と認められないため、乳がんや眼病(がんびょう)の治療で鹿児島や熊本まで出かけて、一回10万円かかることもあります。「補償金が入って、少しはゆとりのある暮らしができると思っていたら、保護を打ち切られ、むしろ保護を受けているときより苦しくなった」と言います。
竹添さんは「補償金は長い間の精神的・肉体的苦しみへの国と企業の償(つぐな)いとして支給されたものだと思います。当然の償いが受けられないのは残念です。毎日のように、ご飯に味噌汁(みそしる)をかけて生活費を切り詰めている暮らしを、国は直接味(あじ)わってほしい」と声を落とします。
仲間と共に頑張る決意
竹添さんは「納得(なっとく)がいかない」と、生健会の仲間と相談して生活保護の打ち切り処分の取り消しを求めて鹿児島県に1月20日、審査請求をしました。
竹添さんと鹿児島県生連と生健会の仲間は、請求書を提出後、県庁で記者会見し、(1)水俣病で苦しんできた人への慰謝料で収入認定するのは受給者への差別、(2)補償金の一部が自立更生(じりつこうせい)に活用できると、出水市が通知を出したのは保護廃止後、(3)辞退届も強制的に書かされたものなど、保護打ち切りの不当性を訴えました。
この訴えには、松本龍環境大臣や蒲島郁夫熊本県知事、マスコミなど世論の支持や共感が広がり、竹添さんに続いて審査請求をする方も出ています。
竹添さんは「勇気を出して行動を起こし良かった。慣れないことで大変ですが、生健会の仲間とともにがんばる決意です」と力強く話しています。
(祝迫(いわいざこ)加津子さん)
(2011年2月13日号「守る新聞」) |