福島県南相馬市で、「東日本大震災の義援金などが収入認定とみなされ、生活保護を打ち切ったことは不当」と、南相馬市(当時は原町区)生活と健康を守る会の会員3人が起こした審査請求に対し、県は昨年12月21日付で同市の処分を取り消す決定をしました。日本弁護士連合会の調査(7月22日)では、南相馬市で震災前の生活保護受給世帯403世帯のうち、義援金などを理由に219世帯が保護廃止。その後の調査では、停廃止処分を受けた世帯は増加しています。昨年12月26日、さっそく「勝利報告の集まり」と税金の学習会を持ちました。(田中由利子記者)
審査請求を起こしたAさん(64)は、「自分一人では泣き寝入りしていた。生活と健康を守る会に入っていたので、『応援するから』と言われ立ち上がった。いろいろな人の力を借りた」「『しんぶん赤旗』に顔が載り、名前は出ていなかったのに知り合いから、『いいことをやってくれたね』と電話がかかってきた」と報告がありました。
同じく請求人のBさん(64)とCさん(76)は、「ありがとうございました。たたかったことがムダではなかった。うれしい」と感謝の言葉を寄せました。
荒木千恵子事務局次長(62)からは、「みなさんが『会』に相談してくれたので、不当な実態があることを知った。厚生労働省にも県庁にも交渉し訴えてきた」と、当時を振り返りました。
いろいろな集会で訴えた成果
弦弓高明(つるゆみ たかはる)県連務局長(64)から、「みなさんがこれまで、東京に行き『反貧困』の集会で訴えたり、記者会見、日本弁護士連合会など、いろいろなところで話してきたことが勝利に結びついている。みなさんが主人公!」と、ねぎらいの言葉がありました。
その後の福祉事務所の対応は、「12月24日に職員2人が謝罪に来て、再度説明に来るとかで、数分で帰った」と3人から報告がありました。
参加者は、「生活相談会などで、会員外の人にこの成果や、生活再建のための自立更生計画の書き方なども伝えていこう」と意思統一しました。
【福島県の知事審査請求裁決について】
裁決では、「生活保護法第56条」に定める不利益変更の原則に違反するとして南相馬市の処分を違法と認定し、取り消した。とくに手続きのずさんさを指摘した。たとえば、「自立更生計画」の内容を把握するための手続きが全くされていない、収入に関する確認を口頭で行い、その経緯が保護台帳に記載されていないことなど。ただ、被災した生活保護受給者に対する義援金などを収入として認定することの違法性・不当性については判断をしていない。
勇気と力をもらう
水俣病生活保護廃止裁判
原告団長・田上和義(53)
大震災や津波、原発事故と未曾有(みぞう)の災害で何もかも破壊され、生活の立て直しも遅々(ちち)として進まない中で、県を動かすすばらしいたたかいをされたみなさんに、心からの敬意を表します。
福島のみなさんのたたかいは、水俣病被害救済のための一時金支給を理由に生活保護を廃止され、今、裁判に訴えている鹿児島県出水(いずみ)市の私たちにも大きな励ましとなり、勇気と力を与えていただきました。
どうぞこれからも、ご支援をよろしくお願いいたします。
(2012年1月22日号「守る新聞」) |