70歳以上の生活保護受給者に支給されていた老齢加算の廃止は憲法違反だと、取り消しを求めて全国9か所で生存権裁判がたたかわれています。2月28日、東京で初めての上告審判決が最高裁であり、原告の請求を棄却する不当な判決が言い渡されました。(田中由利子記者)
寒風の中を最高裁判所南門に110人を超える支援者が見守る中、金沢幸彦弁護士が「不当判決」と書かれた垂れ幕を広げると、ざわめきがおきました。黒岩哲彦弁護士が「最低最悪の不当判決だ」と怒りを込めて報告しました。
判決は「一般低所得者」の貧困状態にあわせて生活保護基準を引き下げるという政府の生活保護政策を追認し、原告の生活実態には一言も触れていません。生活保護法56条の「『決定された保護を不利益に変更されることがない』に反する」という原告側の主張は当てはまらないとし、厚生労働大臣の「裁量権の範囲に逸脱または濫用(らんよう)があるとは認められない」としています。
生活実態を見ない判決
この日、夕方から行われた「最高裁判決報告集会」で松岡恒雄全生連会長は、「生活実態を見ない判決になっている。私たちは憲法25条を暮らしの中に生かし、生活実態を前面に押し出していく運動をこれからも強く打ち出していく。裁判はまだ始まったばかりで、8つの裁判が残っている。全力でがんばる」と決意をのべました。
横井邦雄さん(83)ら原告は、「5年間一生懸命がんばってきたが、裁判官には聞き入れてもらえず本当に残念」「権利はたたかうものにある」「これからも全国一つになってたたかっていく」など、全国の原告や支援者とともにたたかっていくことを誓い合いました。
大田生活と健康を守る会の山崎三四子さん(65)は「裁判所の役割は人権を保障すること。悔しくてたまらないが、終わりではない。これからがたたかい」と力強い感想を寄せました。
(2012年3月11日号「守る新聞」) |