1月20日、札幌市白石(しろいし)区の40代の姉妹の孤立死が発見されました。姉は昨年末に病死し、知的障害者の妹は凍死でした。北海道生活と健康を守る会連合会(道生連)は、独自調査をして孤立死の実態を把握するとともに、札幌市長に対して申し入れを行い、現状を改善するために動き出しています。
マスコミ報道では、両親は他界し頼れる人もなく、姉は失業中、妹の障害年金(年額80万円)だけで暮らしていました。発見時、ガスストーブはありましたが、ガスも電気も止められ、冷蔵庫の中は空でした。
保護申請侵害行為があった
「一昨年の6月から3度も保護課に相談に行っているのに、なぜこのようなことになったのか」「なぜ救うことができなかったのか」、事件が報道されるたびに、道生連にも視聴者から「自分も何度も行ったがダメであきらめた」という告発も。道生連が独自に調査を行った結果、白石区保護課の重大な欠陥を見出(みいだ)しました。
白石区保護一課長は、「生活の困窮は分かっていたが、申請の意思が示されなかったのでどうすることもできなかった」と弁明。しかし、3回の面接受付票には、「主(しゅ)は仕事も決まっておらず、手持ち金もわずか」(1回目)、「手持ち金1000円、食料も少ない。1週間の生活が困窮。国民健康保険未加入。公共料金の支払いは待ってもらっている、家賃も未納。非常用パン14缶を支給」(2回目)、「求職活動しているが決まらない、依然国保未加入、手持ち金も残り少ない」と記録されています。ところが白石区保護課は、「主に対して能力資産活用など生活保護全般について説明。高額家賃について教示。保護の要件である懸命なる求職活動を伝えた」だけ。申請意思欄には「無」に「○」がされ、3回目には、印鑑等「持参していただくもの」15項目を指示している用紙だけを渡し、申請用紙は渡していません。白石区保護課が申請権を侵害するような行為を行っていたと受け取れる対応が判明しました。
孤立死関係で交渉する予定
道生連は2月23日、札幌市長に対し「保護行政の改善」を求めて申し入れを行いました。応対した副市長は「事件については真摯(しんし)に受け止めている。要請書等を読ませてもらい検討する」と答えました。3月23日には厚生労働省などと、26日には札幌市と交渉する予定です。
(岡ア恵治通信員)
生活脅かす政治・経済の異常
“理不尽な運命”変えよう
元山梨県立大学教授 寺久保光良
2月下旬になって、札幌市白石区に続いて、さいたま市、東京の立川市で何人もの方が餓死、凍死、衰弱死をしていたことが発見されました。白石区のニュースを聞いた時には25年前の母子家庭の母親餓死事件を鮮明に思い出しました。本当にこの国はどうなっているのだろうかと考えさせられます。
しかし、よくよく考えると日本では年間3万人の孤独死が報告されており、その上3万人を超える自殺者が14年間連続しているのです。本当に異常です。
政治と経済の異常が私たちの生活を脅(おびや)かしています。国は国民のためにあるので、国民は主権者であるはずです。もうこのまま「理不尽な運命」として唯(い)々(い)諾(だく)々(だく)と受け入れるわけにはいきません。運動によって世の中の流れを変えていきましょう。
(2012年3月18日号「守る新聞」) |