静岡県御前崎市に住むタイ王国出身の大角カニカさん(52)の夫である大角信勝さん(当時62)は、福島第一原子力発電所での作業中に死亡、労災と認定されました。御前崎市生活と健康を守る会の仲間が悩むカニカさんを支えています。
会の仲間は「今まで苦しかったね。信勝さんが一生懸命働いていたことが認められたよ」。大角カニカさんは「本当に良かった」と喜びました。
夫の大角信勝さんは元請である東芝の4次下請けに当たる建設作業会社に臨時で雇われ、福島第一原発で2011年5月13日から集中廃棄物処理施設で放射性物質に汚染された水を処理する配管工事に従事しました。信勝さんは、これまでも石川県にある志賀原発、静岡県の浜岡原発など全国各地の原発を転々としつつ作業をしてきた原発労働者でした。
現地では、短時間でも放射性物質が飛散(ひさん)する過酷な状況の中で、重く蒸し暑い防護服を着ての作業でした。翌14日、就業中に体調が急変し、意識不明の重体となりました。しかし、医師は常駐しておらず、迅速な処置ができませんでした。医療設備の整っているいわき市立総合磐城(いわき)病院に搬送(はんそう)されたときには2時間45分が経過。搬送(はんそう)先の病院で死亡が確認されました。
死因は心筋梗塞(しんきんこうそく)と診断されました。信勝さんの死を聞いた友人は「これは労災扱いになるのでは」と妻のカニカさんに手紙を送りました。
会員とも顔なじみになり昼食会でタイ料理振る舞う
御前崎市生活と健康を守る会は2011年8月末、カニカさんの状況を聞き、早速訪問しました。
ドアチャイムを鳴らすと不安そうなカニカさんの顔が見え、大橋昭夫弁護士から事情を聴き訪問したこと、生活と健康を守る会は、「心配ごとや困ったことなどをみんなで解決していく会」であることを伝えると、表情が和らぎ、部屋に通してくれました。信勝さんが亡くなった後、頻繁(ひんぱん)にいろいろな訪問や電話があり、精神的に疲れている様子でした。
生活と健康を守る会は生活や仕事のことなど、何でも話す例会を開いているので「ぜひ、仲間に入ってお互いに励まし合い、助け合っていきましょう」と誘うと、例会に顔を見せてくれました。
会員も「困ったことがあったら教えて」「私も近くに住んでいるからね」「困ったときはお互い様」など声をかけます。カニカさんも生活の様子やタイの暮らしなどを話し、会員とも顔なじみになりました。次の例会には、カニカさんがタイ料理のグリーンカレーを作ってくれ、おいしくて3杯もお替りした人やスパイスで涙が出た人など楽しい昼食会ができました。
一生懸命働いていたこと認められて仲間も大喜び
今年2月24日、「短時間の過重労働による過労死」として労災と認定されました。大橋弁護士は「労災死と思われる信勝さんの死は、日本語の読み書きが不自由なカニカさんに何のアドバイスもなく、友人の手紙がなければ私的な病死と葬り去られた。東京電力、東芝の態度は『労災隠し』だ」、「国はそれなりの責任は果たしたが、二度とこのようなことがないよう監督を強め、安定した労働環境の中で安心して収束作業に従事できるよう指導すべき」と話しています。
御前崎市生活と健康を守る会では、「一人はみんなのために みんなは一人のために」をモットーにカニカさんを支えていきます。(清水静子さん)
(2012年4月22日号「守る新聞」) |