6月20日、政府は参議院本会議で、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律案」(以下、障害者総合支援法案)を十分な審議もないまま、民主・自民・公明党の賛成多数で可決・成立させました。子どもが重い障害を持つ埼玉県・与野生活と健康を守る会会員・読者の、あざみ共同作業所の親の会で一緒に活動する中村和子さん(71)と佐久間礼子さん(70)に、この間の運動と「思い」を語り合ってもらいました。
佐久間 障害当事者やその家族・関係者が運動をして「必要な人に必要な支援を」と、国といろいろ約束してきたのに、今回の障害者総合支援法にはほとんど盛り込まれていなかった。まさに、「ないがしろにされた」の思いが強いわ。
中村 私の息子は、「障害福祉サービスはお金で買うものだ(障害の自己責任)」という考え方の「障害者自立支援法は憲法違反」と、裁判の原告になったの。全国で71人よ。親として、「障害者の基本的人権の行使を支援することを基本にして」と訴えてきたわ。
国は「裁判の目的と意義を理解した」と言い、2010年1月7日、「基本合意文書」を取り交わし謝罪。この文書と(国連の)権利条約を基本に、議論が進められてきたわ。
佐久間 11年8月には「骨格提言」が出されたわね。障害別を乗り越えあらゆる立場からの55人の委員が、1年半かけてまとめあげたの。障害者自立支援法廃止後の、新たな法律の骨格を提言していたのよ。
中村 でも、それらは生かされなかった。委員会審議はたった3時間、当事者の声も聞かず、6月20日に民主・自民・公明党が賛成し参議院で障害者総合支援法が成立したわ。
佐久間 私も参加したけど、中村さんは議員要請と路上集会、傍聴に4〜6月でも15回位行っているわね。
中村 政治不信になったわ。でも、親亡き後も、子どもたちが安心して暮らせる法律ができるまで、簡単には負けないわ。
佐久間 これでたたかいは終わったと思っていないわ。子どもたちが人間らしく幸せに生きるための道を求めて、これからも歩いていくわ。
実態無視の法律に怒り
障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会 会長 中内福成
「障害者総合支援法案」は、たとえ法律名を変更しても、問題の多い「障害者自立支援法」を延命させる「改正案」以外のなにものでもありません。長年その廃止と「障害者総合福祉法」制定を求め続けてきた障害者・家族、関係者の願い・期待を踏みにじるものです。
そもそも障害者自立支援法の廃止、総合福祉法の制定は、民主党の政権交代時の公約でした。私たちは「障害者自立支援法は違憲」という裁判を起こし、新たな福祉法づくりで「基本合意」し、和解をしました。
その約束を反故(ほご)にしたことは、「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」と訴えてきた障害当事者への裏切りです。
私たちは、高齢者・子ども分野との連帯・共同を重視し、社会保障を口実に消費税を引き上げようとする「社会保障・税の一体改革」を許さない取り組みを進めていきます。
(2012年7月22日号「守る新聞」) |