「原発はもういらない。再稼働は許さない。原子力と人間は共存できない」―。ノーベル賞作家の大江健三郎さんらが呼びかけ人となって、7月16日、東京の代々木公園で開催された「さようなら原発10万人集会」には、全国から17万人(主催者側発表)が集まりました。「生活と健康を守る会」の会員も熱い思いを政府に届けようと、各地から多くの人が集会・デモに駆け付けました。(西野 武記者)
3連休の最終日、炎天下にもかかわらず、「原発はゼロ」への強い思いが人々を動かしました。
乳母車(うばぐるま)を押す若いお母さんや、互いに手を取り合う老夫婦、さらには、奇抜なファッションに身を包んだ若者らが、それぞれの思いをプラカードに託して、「福島に学べ」と、強いメッセージを発信しました。
呼びかけ人の一人、ルポライターの鎌田慧(さとし)さんは、「一刻も早く原発を止めなければいけません。反原発の署名を750万人強集めて、藤村修官房長官に持って行きましたが、その次の日、大飯原発再稼働が決定されました。国民の声を聞かない政府は、必要ありません」と訴えました。
また、音楽家の坂本龍一さんは、「電気のためになぜ命が危険にさらされなければならないのでしょうか。福島事故以降に沈黙をしていることは野蛮(やばん)です」と語りました。
経済評論家の内橋克人さんは「『合意なき国策よ、さようなら』と言い続けなければなりません」と述べ、大江健三郎さんは「大飯原発の再稼働は、私たちへの侮辱(ぶじょく)です。侮辱の中で生きることはあってはならないことです」と続きました。
作家の落合恵子さんは「野田首相に聞きたいです。あなたたちが国民と言ったとき、いったい誰を思い浮かべるのですか」と問いました。
90歳で参加した作家の瀬戸内寂聴(じゃくちょう)さんは「自分以外の命のためにも反対と言い続けましょう」と訴えました。
会場では、ライブ、トークショーなど多彩なイベントが行われ、終日熱気に包まれていました。
会員の声
将来の大切な人のために
人間が後世に残してならぬ物
福井・南越 堀田圭佑(28)
今回集会に参加した大きな理由は、10―20万人規模の集会を一度体験してみたかったことと、まだ見ぬ将来の大切な人(パートナーや自分の子どもたち)のためにと思ったからです。
朝4時に、福井をバスで出発しました。昨日はほとんど眠れませんでした。
私の父親は、福島の原発事故以降は、考え方が「あれは危ない」に変わりました。知り合いの看護師さんは、「昔経験した60、70年代の安保闘争に似ている」と話していました。
敦賀市の5人に1人は、原発関連で働いています。「すぐに廃炉にして」とは言い切れませんが、原発は、人間が、後世に残してはいけない物だと思っています。
この集会を原発ゼロにつなげる
福島・喜多方 酒井筆子(66)
参加者が多く、メーン会場までたどり着けませんでした。参加者のメッセージを込めたプラカードの「原発NO!」「原発ゼロ」「再稼働反対」の文字が印象的でした。家族連れや若い人の参加が目立ち国民的運動の広がりを感じました。
人、人、人の波、久しぶりのデモに感動しました。17万人が一堂に会し、「さようなら原発」を訴えていることの意味を「野田首相」には分かってほしいです。福島原発事故で、いまだ16万人が故郷に帰れない現実を、東電も、政府も考えてほしいです。「この集会を原発ゼロにつなげなければ」の思いを深くしました。
17万人の中の1人として参加
東京・八王子 日野 邦(76)
絶対に原発をなくしてほしいと思って「17万人のうちの1人」として参加しました。
(2012年7月29日号「守る新聞」) |