全大阪生活と健康を守る会連合会は8月8・9日、大阪市内で市保護課と交渉を行いました。2日間で市内17組織から、延べ224人が参加。アンケートによる「私の要求書」190枚を提出しました。保護課の課長代理を含む4人、2日目は西成区職員も参加し対応しました。憲法無視の橋下(はしもと)市政に切実な実態と要求を突き付ける怒りの交渉となりました。(小古間ゆりか記者)
交渉の冒頭、鶴見生活と健康を守る会の鹿山文達会長が、「鶴見区の都倉尚吾新区長が区のホームページで『生活保護費は受給者による労働の対価と捉える』と暴言。ボランティアを強要しようとしているが、どう考えるか」と質問。市は「保護費は労働の対価ではない。本人が希望しないボランティアを指導指示でできるものではない」と回答しました。
「もらう100円とあげる100円、負担するのは勤労者」と、企業の社会的責任は外において相互扶助の観点で捉えている鶴見区長。区長は橋下徹市長が公募で選び、8月から任命されています。「社会保障の理念は所得の再配分。区長が憲法や生活保護法から逸脱したら、是正を」と強く要望しました。
城東生健会の女性は、「皮膚病で風呂に入りクーラーをかけろと医者から言われているが、電気代がかかるので扇風機で我慢。一時金や老齢加算があれば助かる」と復活の要求。「みなさんはどうですか」と問うと、会場から大きな拍手が湧きました。
保護開始前に求職活動強制 申請中は「助言」と周知を
平野生健会からは、「失業中で保護申請をしたら、『決定までにハローワークに週2回以上、面接は数回以上行って求職活動状況報告書を出せ。それが不十分な場合は、開始まで1か月かかることもある』と言う。生活費も交通費もないのに求職活動はできない」との声があがります。
保護開始前の「助言指導」については、当局は「申請中にできることは『助言』のみ。再度周知する。稼働能力活用の意思は、保護の要件になるので確認する」と回答。「『保護が開始されたのちに求職活動を頑張るから、まず保護を開始して』と言った場合、申請は却下されるのか」と追及すると、「報告書の提出を強制はできない」と認めましたが、却下になるかは「答えられない」。
撤回を求めて、話し合いを続けることを確認しました。
受給者に再度扶養義務調査 警察官OB配置より増員で
橋下市長は「不正受給キャンペーン」に乗じ、生活保護世帯に再度の扶養義務者聞き取り調査をしています。「扶養義務調査は保護の開始要件か」と質(ただ)すと「開始要件でない」との回答でした。
福祉事務所への警察官OBの配置については、「窓口の市民や職員の安全などに対応するため」と回答。「窓口でのトラブルは警察と連携をとって駆けつけてもらえばいいし、家庭訪問はケースワーカーを増員して複数で行けばいいこと」と、中止を求めました。
受給者を1人の人間として扱わない橋下市長の生活保護行政は、犠牲者を生むだけ。「憲法と法をもっと勉強してほしい」と、みんなの怒りが高まっています。
西成区で医療機関の登録制度
医療で差別するのか
2日目の最後は、西成区の医療機関等登録制度について交渉しました。
「通院医療機関等確認制度」と名称が変更され、8月1日から実施されたこの制度は、受給者の希望を参考に1診療科について1か所、通院する医療機関・薬局を選定して「通院医療機関等確認証」に記載するというもの。当局は「重複受診や薬の多用を予防して、適正な医療を確保するため」と言います。
医療扶助割合低いのに実施
参加者は、「専門的な医療知識を持っていない役所の職員が病院を決められるのか。適正な医療を受けるためと言うが、費用を安くするためではないか。受給者が不正をしていると見る人権侵害の最たるものだ」と抗議。
2011年度の重複診療件数、不正行為数を「把握していない」との回答に「データもないのに診療を制限するのか」「生活保護費総額に医療扶助の占める割合は10年度で、全国平均は47・2%、大阪市は45%、西成区は43・4%なのに、なぜ実施するのか」と追及。
「西成区では『医療で差別されている』と心配する声を聞く。行きたい病院に自由に行けるようにしてほしい」と要望しました。
「税金で」の発言 会場は怒り沸騰
1診療科目1医療機関とする法的根拠を聞く中で、当局は「法的には明記されていない」と言いつつ、「生活保護は最低限度の保障で、税金でまかなわれているから」と発言。
これには参加者の怒りが沸騰(ふっとう)。「公務員の給料もすべての社会保障制度も、税金でまかなわれている。生活保護受給者だけが制限を受けないといけないのか。憲法14条の法の下の平等に反する」「『健康で文化的な最低限度の生活』だ。下限を示しているだけで、最低以上の生活にするために、国は向上・増進に努めなければならないと憲法25条はうたっている」と追及。「間違った発言をした」と当局を謝らせ、「受診抑制につながる」と中止を再度求めました。
(2012年9月2日号「守る新聞」) |