仲間たちが情報を共有し、力を合わせれば必ず道は開ける―。第26回日本高齢者大会(香川県高松市、10月10、11日)の最低生活保障をめぐる分科会。困難に直面している人は解決の糸口をつかみ、参加者は交流を通して悪政への怒りを高めると同時に、今後の展望を深めました。(番匠寛記者)
第26回日本高齢者大会
大会初日の13分科会の1つが「生存権裁判と人間らしい文化的最低保障制度の実現にむけて」。竹田節夫全生連全国理事・徳島県生活と健康を守る会連合会事務局長が講師を務めました(司会は関藤香代子岡山県生連事務局次長)。
各地の生活と健康を守る会の会員ら36人が参加。詳細な資料を用いた竹田さんの分かりやすい講演に続き、意見交換・経験交流が行われました。
行政は不勉強通達周知せず
「適正化」という耳触りのいい言葉とは裏腹に、改悪が企まれている生活保護制度。現状でも支給額は十分ではなく、福祉事務所など関係機関の不勉強・無理解が指摘されることもしばしばです。分科会では高知県香美市のとんでもない実態が明らかになりました。
発言者によると、生活保護申請書は誰でも自由に持っていけるようになっています。しかし、受給者の権利の1つである移送費が認められず、何度交渉してもらちが明かないというのです。
早速、フロアから声が上がります。「厚生労働省は移送費を認めている。職員は勉強不足」。
自家用車保有も話題になりました。地方の市町村では公共交通機関の撤退(てったい)が相次ぎ、自家用車がないと日常生活が成り立ちません。この問題で行政と交渉してきた福島県・郡山市生活と健康を守る会の伊藤よつ子会長から、生活保護受給者への市職員の暴言問題も含め、涙交じりの訴えがありました。
生活保護受給にあたり、一定の条件を満たせば自家用車所有は認められますが、一方的に所有放棄を強要されるケースが後を絶ちません。
三重県の参加者からは「生活実態、必要性を無視した一方的な所有放棄強要はないようだ」との報告がありました。
移送費や自家用車保有問題はほんの一例にすぎません。中央官庁通達があっても周知徹底せず、福祉事務所によって解釈が異なったりします。そして、老齢加算廃止が端的に示す現制度の矛盾、利用者不在の運用が続いています。
生存権裁判に仲間から声援
社会保障制度の改悪を食い止め、国民本位の内容にしなければなりません。闘いは正念場を迎えています。みんなが情報を共有し、力を合わせることと、実態を広げて世論を喚起することの重要性が一段と高まっています。あらためてそれを確認した分科会でした。
参加した会員2人に感想を聞きました。
新潟県生活と健康を守る会連合会の鈴木治雄顧問は「利用者不在の生活保護制度の追及を続け、大会には毎回参加している」と語っていました。新潟では生存権裁判を闘っています。それを支援しようという声が全国的に高まり、「分科会でも愛媛県の参加者から『支援する会を立ち上げたい』との発言があり、エールをもらった」と喜んでいました。
三重県・松阪生活と健康を守る会の堀田芳雄会長も「大会参加はほとんど欠かさない」一人です。「各地の仲間に会い、活動の糧を得る」のが参加の狙い。来年の第27回大会は三重開催。「すぐに準備に入る」と張り切っていました。
(2012年10月28日号「守る新聞」) |