最後のセーフティーネットである生活保護制度が、大きな危機に直面しています。政府は、自らの責任を棚に上げ、「財政健全化のためには生活保護費削減は不可欠」と基準切り下げに躍起になっています。しかし、長引く不況などにより、国民生活は細る一方です。社会福祉の削減は、とうてい許されるものではありません。狙い撃ちされている生活保護受給者。その中でも特に大ナタがふるわれようとしている子育て世帯への影響と、当事者の声などを紹介します。
家族3人で最低生活 子どもの費用は削れない
札幌市北区 西塚妙美さん
家族が多い世帯の生活保護が削られようとしています。報道によると、うちは夫婦と子ども1人、8・5%減ですって。金額にすると約2万円になります。
今でも節約に節約を重ねて生活しています。2万円も減らしての生活なんて考えられません。何を削ればいいのか…。子どものことでは削りたくありません。これからの生活が不安でいっぱいです。
生活保護を切り下げる前に、若い人がちゃんと生活できるように最低賃金を上げたり、社会保障を充実して安心して生活できるようにしなければなりません。
そして、平和憲法がある国に軍備はいらないし、政党助成金もおかしいので、「そっちを先に削ってよ!」と思います。
マスコミは不正受給のことばかりを取り上げますが、生活保護切り下げで、国民生活がさらに悪化することと、いろいろな制度に及ぼす悪影響を、ちゃんと知らせてほしいです。
施設で働いている私はそんな思いで、利用者の方に制度改悪反対署名の協力を訴えています。
就学援助打ち切り 貧困の連鎖に
生活保護基準引き下げは、それをもとにしている就学援助制度など各種制度に大きな影響を与えます。
全大阪生活と健康を守る会連合会事務局次長の秋吉澄子さんは、「大阪市では、今年4月から持ち家世帯の就学援助が受けられる基準(目安)が引き下げられます。大阪市や吹田市などはすでに来年度の目安額を決めていますが、市町村によっては2〜3月の議会に引き下げ提案が出てくることも予想されます。生活保護を受けていない人が就学援助を打ち切られたら、生活保護を受けざるを得なくなります。貧困が世代を超えて引き継がれる貧困の連鎖になる」と、強く基準引き下げ計画に憤ります。
憲法25条の精神守れ
小中信幸弁護士
国民には健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある、と規定した憲法25条は守られなくてはなりません。したがって、現行の生活保護基準が、最低限度しか満たしていなければ、それを下げるのはおかしい。
生活保護基準の見直しにあたっては、まず現状を精査。厳格に調査し、判断すべきです。
(小中氏は朝日訴訟第一審判決で原告勝訴の判決下した裁判官)
(2013年2月3日号「守る新聞」) |