兵庫県在住の石田隆さん(仮名=60歳)が姫路市を相手に提訴していた、病院への「移送費=交通費」をさかのぼっての支給を求めた裁判の判決が3月22日にあり、神戸地裁(栂村明剛裁判長)は、原告勝訴を言い渡しました。判決文は、被告の姫路市に対し、原告石田さんへの慰謝料10万円と通院交通費113万3620円の支払いを命じました。(飛谷幹雄さん)
市、申請受け付けず知事、大臣へ再審査請求
石田さんは2001(平成13)年3月12日に副甲状腺癌(がん)および原発性副甲状腺機能亢進症と診断され、神戸大学医学部付属病院に入院しました。入院後すぐに生活保護を申請し、受理されました。4月7日に退院し、その後は、神戸大学医学部付属病院、小林診療所、大阪大学歯学部付属病院へ定期的に通院していました。
しかし、姫路市の自宅から神戸の病院まで1人で通院することができず、通院には付き添いが必要であり、駅までタクシーを利用せざるを得ない状況で、交通費がかさみ家計を大きく圧迫していました。そこで、ケースワーカーに再三にわたり通院交通費の支給を求めましたが、「通院交通費は出ません」「生活保護費に含まれています」と虚偽の説明が続きました。
07(平成19)年11月、北海道滝川市の「通院移送費」不正受給事件の報道で、通院費が支給されることを知り、早速、福祉事務所に支給の申請をしましたが、福祉事務所は「通院交通費を事前に申請しなかった」として却下しました。
石田さんは、不服として、兵庫県知事に審査請求、そして、厚生労働大臣に再審査請求を行いましたが、どちらも却下するとの裁決でした。
これを受けて、11(平成23)年3月25日に神戸地方裁判所に提訴しました。この間、多くの傍聴者の参加の下、12回の審理が行われ判決が下されました。
原告、 弁護団が市に控訴断念を要請
勝訴判決を受けての報告集会では、姫路生活と健康を守る会の高島昭典会長の司会で、14人の弁護団の代表から「判決文の全文をまだ読んでいないので詳細は分からないが勝訴の判決に間違いはありません」との報告がありました。
また、参加した弁護士は「今回の裁判内容は前例がない難しい内容でした。しかし、ケースワーカーの行為は許しがたい行為であり、司法的には絶対救済が必要だと感じました」と語りました。さらに「今回の勝利判決は、多くの支援者によって勝ち取られたと思います。裁判長も人間です。おかしいと思う人たちがたくさん傍聴することによって違ってくると思います」など、勝利を喜ぶ声が上がりました。
最後に原告の石田さんが「はじめは少し不安がありました。しかし、弁護士の協力と、たくさんの支援者が、私を成長させ、勝利につながったと思います」と熱く語りました。
原告、弁護団は「埼玉県三郷市生活保護訴訟に続き、今後の生活保護行政に強い警鐘を鳴らすものとして高く評価する」と声明を発表しました。
3月26日には、弁護団や生健会など8人が姫路市に対して「判決内容を尊重し、控訴しないように」という文書を提出しました。
(2013年4月7日号「守る新聞」) |