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ツケは結局国民が 農業つぶす亡国協定 TPPを考える 主導権アメリカの手に

 環太平洋連携協定(TPP)は、高らかに「自由貿易」をうたっています。その理念自体はいいことでしょう。しかし、見え隠れするのはアメリカの覇権主義。決して互恵平等ではない、との指摘が少なくありません。最も打撃を受けるとされる農業を営む、生活と健康を守る会会員に思いを聞きました。

40年前も大打撃
悲劇再来はごめん
徳島県勝浦町 井出幸夫さん(59)

 「必ず日本の農業と食は守る」「私を信じてほしい」。40年前、牛肉とオレンジ自由化の時も、自民党は同じことを言っていました。しかし、見事に裏切られてしまいました。
 当時の政府は、「自由化国内対策」という金をばらまいて農民を欺き、畜産・みかん産業に大打撃を与えました。私の町にあったジュース工場はつぶされ、先祖が汗を流して築きあげたみかん農園は、半分以上が廃園になってしまいました。
 TPPは、40年前とは比べものにならないほどの大打撃が予想されます。水田の9割はつぶれるのではないでしょうか。今でさえ低水準の食料自給率はさらに減少。13%程度にまで激減、という試算もあります。
 「国益は守る」というものの、今からTPPに参加しても、議論の場さえ与えてもらえないことを政府は隠しています。地域は崩壊し、大切な農地は草だらけの荒れ地になってしまうでしょう。生き残ることができる農家は例外的だ、とまで言われています。
 「安い輸入食品が買えるからうれしい」という消費者の声があります。でも、本当にそうでしょうか。
 アメリカはこれまで、相手国の農業をつぶし、思い通りの値段で自国の農産物を買わせる、という戦略をとってきました。
 さらに、遺伝子組み換え食品であろうが、発ガン性のある添加物が使われていようがまったくおかまいなし。アメリカの言うがままにルールが変えられてしまうでしょう。食の安全はズタズタにされてしまいます。
 食べることは生きていくための基本です。危険な食品を排除し、子どもや孫たちの命と健康を守る責任が、私たちには課せられています。
 日本を亡国に導くであろうTPP交渉参加は、断じて認めるわけにはいきません。

強者のみが利益
まさに新自由主義
福島市 松川米次さん(69)

 TPP交渉参加を表明した安倍首相は「農業の聖域を守る」と弁明しています。しかし、疑問だらけです。
 昨年新たに参加したカナダとメキシコは、交渉参加9か国が合意した条文はすべて受け入れるなどの不利を承諾した上で参加が認められた、と伝えられています。
 ジャーナリストの堤未果氏は「アメリカでTPPの合意文書や交渉の進捗(しんちょく)状況をリアルタイムで自由に見ることができるのは、多国籍企業のアドバイザーと一部官僚だけ」とテレビ番組で発言しています。
 インターネットや新聞などで調べると、TPPの実質はアメリカとの経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)ということが分かりました。
 本質は、(1)規制緩和で、国や政府の役割を縮小する新自由主義(2)大企業による社会支配―と思うに至りました。多国籍企業に対峙(たいじ)する世論づくりと、1票の重みを大切にしなければなりません。

(2013年4月21日号「守る新聞」)

 
   
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