利用者の声に何ら耳を傾けることもせず、意図的な判断基準を下に切り下げられた生活保護基準。今月から支給額が削られ、3年がかりで大幅削減となります。それに対して、黙ってはいられないと全国各地の生活と健康を守る会が、審査請求(不服申し立て)に立ち上がっています。生活保護「改正」法案は廃案に追い込みました。次の闘いに臨んでいます。(番匠 寛記者)
手を取り合って
行政の違法あるいは不当な処分などの取り消しを求めるのが、審査請求です。生活保護基準の引き下げは、生存権を定めた憲法25条を否定した行為なので、まさにこの制度の対象となります。請求に向けて、学習会などの準備作業が各地で進んでいます。
広範な人たちと手を取り合って審査請求を進めていこう―。そんな取り組みが目立ちます。
福島県生活と健康を守る会連合会は、生活保護利用者を中心として、県内各地で学習会や減額計算会を開いています。取り組みをより幅広く推進していくために、7月20日には反貧困ネットワークふくしまに協力を要請しました。
通知が届いた後に、すぐに行動できるように準備を進めています。
1000件(全道生活保護利用世帯の約1%)の審査請求を目指す北海道生活と健康を守る会連合会。それには会の外にも運動を広げる必要があることから、他団体と共に「生活保護を良くする会」を立ち上げました。
今後の計画などは記者会見で発表。マスコミ報道で取り上げられました。集団審査請求を9月20日に予定しています。
広島県生活と健康を守る会連合会は、医療生活協同組合が把握している生活保護利用者や弁護士らと幅広く連携した取り組みを進めていきます。
「気軽に審査請求をしよう」と呼び掛け、輪を広げています。
請求が行政動かす
熊本市生活と健康を守る会にうれしいニュースが飛び込んできました。福祉事務所が認めなかった、視力の弱い会員のパソコン購入が、審査請求で一転し、購入可能となったのです。
当初は「認められない」の一点張り。そこで弁護士の協力も得て審査請求を行ったところ、7月11日付で購入を認める裁定となりました。パソコンを活用して行動範囲を拡大し、自立の道を歩む、との主張が通ったのです。審査請求で道が開けた事例の1つです。
過去にも母子加算の廃止撤回を求めて、審査請求闘争が繰り広げられました。運動が世論も動かし、復活を勝ち取りました。
「審査請求を通して、基準切り下げの不当性を明らかにする」―。各地で怒りの声が高まっています。
新潟県生活と健康を守る会連合会が作成した審査請求書
苦しさを国に直訴
福岡市東区 山脇 誠さん(62)
私は脳梗塞で倒れ、生活保護を利用。節約を重ねる毎日です。
一人暮らしで、食事はほぼ毎日自炊しています。食材購入は近くの安売り店。夜9時過ぎに、半額になった品物を買うようにしています。
切り詰めていますが、自転車に長時間乗れなくなり、バスを利用するのでその出費がかさみます。また、暑い日が続いていますが、エアコンを使うと電気料金が月に3000円程増えます。
楽しみは週に1回、400円の弁当を買って食べること。しかし、生活保護費が下がると、それもできなくなります。
電気・ガス料金も引き上げられると報道されています。消費税も上げられます。生活はますます苦しくなります。生活に困っている人のための生活保護なのに、引き下げはおかしいと思います。大変さを訴えるために、審査請求をします。
(2013年8月4日号「守る新聞」) |