都内で特別養護老人ホームに申し込みながら、入所できないお年寄りは4万人以上、杉並区では2000人ほどいます。杉並生活と健康を守る会では、更地にされる運命にあった都営住宅の跡地に特別養護老人ホーム「恵みの家」建設を実現させました。会員さんの声が発端となり、区議会への陳情書と署名を通じた運動が大きく実を結びました。
通常、都営住宅が老朽化して建て替えられると、100戸未満の団地は区に移管され区営住宅となります。しかし当時の区長は「いらない」と受け入れを拒否。都営「和田本町アパート」は再建されないまま、空き地になり、民間に払い下げになる運命にありました。
ここに、70人分の個室と10人分のショートステイ室をもつ特別養護老人ホームができたのです。
きっかけは会員の声
さかのぼること4年前の2009年7月、第15回総会第8回理事会で「都営住宅近くに住む、心臓に持病のある会員が『都営住宅の解体工事の振動で大変。工事が終わるまで、どこかに転居させてほしい』と話している」と発言がありました。
さっそく役員が現場に行ってみたものの、工事は終了間際で、その会員さんの要求をかなえてあげることはできませんでした。
この時、工事業者に「この跡地はどうなるのか?」「区営住宅になるのか?」と尋ねてみると、「更地にするだけ」との回答。
さらに東京都に問い合わせてみたところ「区営住宅は建たない。更地にして、都の都市整備局から財務局へ移管される」と電話で回答がありました。ここから「会」が動き出します。
住み慣れた近くに
8月の理事会で、跡地には区営住宅か特別養護老人ホームの建設を要望する事を確認し、翌月、杉並区と区議会に「都営和田本町アパート跡地利用に関する陳情書」を提出しました。
それから1年と3か月の間に4000筆近くの陳情賛同署名を集め、提出。署名運動では「署名クイーン」と呼びたくなるほど、頑張った人も現れました。田代キクエさん(68)は、「朝のラジオ体操に参加しています。体操に来られる人は元気ですが、友人のなかには参加できなかったり、親の介護をしていて来られない人もいます。数年前、群馬県・静養ホームたまゆらで火災事件が起きました。たまゆらには、都内のお年寄りがたくさん入っていました。今回、特養ホーム建設の話を聞いた時、今住んでいる地域の近くで建てたいと思いました。もちろん体操の場所にも署名用紙を持っていきましたよ」と話します。
なかなか区議会での審議は行われませんでしたが、都や区の担当者と懇談を行うなど、多方面からの働きかけを進めてきました。
そして2013年5月、念願の特別養護老人ホームが完成。みんなの喜びもひとしおです。
(佐藤則雄さん)
(2013年11月10日号「守る新聞」) |