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生活保護改悪2法案と対立する判決 完全勝利! 岸和田市の生活保護却下は違法 大阪地裁

 「3年11か月に及び支えてくださり本当に有難うございました。やっと荷が下りました」―。「派遣切り」で失職、職を探しても就労できず、生活保護を申請した大阪岸和田市の男性(40)とその妻(48)が、市の却下処分取り消しを求めた訴訟の判決が10月31日大阪地裁でありました。判決は、今国会に出されている生活保護改悪2法案と真っ向から対立する「市の処分取り消しと慰謝料68万3709円を命ずる」もので、原告側の完全勝利でした。 (西野 武記者)

保護が必要な状態

 田中健治裁判長は、「生活保護法4条1項が定める稼働能力活用要件について、原告は、働ける能力も意思もあった。しかし、就労の場を得られる状況にはなかった。保護が必要な状態であったことは明らかで、市が申請を却下したのは違法」と判断しました。
 原告の男性は申請を5度も却下されています。最初の相談を含めると6度となります。
 男性は、1972(昭和47)年大東市に生まれ、知的障害を持った姉と妹の3人きょうだい。父が勤める会社社長が夜逃げをし、父が保証人になっていたため、借金取りが連日押し掛け、家庭が崩壊。父が家出し、母は生活保護を受けるようになります。小学校時代はいじめに遭い不登校に。中学卒業後に飲食店や工場で派遣社員などとして勤務しました。その後転職を重ね、2008年2月に失職。何度も求職をしますが、面接すら行きつけず、生活保護を申請し、却下されます。仕事を探し続け就労を怠ったことはありませんでした。当時、無職、無収入で、所持金300円という状態でした。

署名は1万4001筆に

 判決当日は、朝から大阪地裁近くの大阪弁護士会館に、会員ら支援する人たち200人強が集まりました。
 弁護団事務局長下迫田(しもさこだ)浩司弁護士があいさつすると、「いよいよだ」という空気がぴんと張りつめ、全員で隊列を組んで入廷行進。傍聴券の抽選を行い、92人が入廷しました。
 裁判長が「処分取り消しと、慰謝料支払い」を言い渡すと、裁判所内に喜びが走り、「完全勝訴」の幕を掲げた下迫田弁護士が、入廷できなかった人への報告に走りました。
 会見で、男性は「40年間ずっとつらかった。母が生活保護を受けていて、小学生の頃グローブで遊んでいると、近所の人にぜいたくだ、店に返してこいと言われた」と話し、「その後も借金返済で苦労し、妻には別れてくれと言ったが、一緒にいたいと今日まできた」と奥歯をかみしめました。
 その後、弁護士会館で開いた報告会で尾藤廣喜弁護士は「稼働年齢や求人倍率などで判断せず、個人の状態がどうであったかで判断したのは一歩踏み込んだ、立派な判決です」と語り、自動車保有で勝利した枚方裁判の佐藤キヨ子さんも応援に駆け付け「これが負けたら日本ではない。私たちの思いが伝わり本当にうれしい」と言葉を詰まらせました。
 岸和田生活と健康を守る会小林十三夫事務局長は「人間がしっかり人を支えるのは、人を成長させる。夫を妻が支え、夫婦を周りが支え、周りを全国が支えてくれました。貧乏が人を殺す世の中であってはなりません」と強調。この日までに全国から寄せられた署名は1万4001筆に上りました。
 報告会の後、岸和田市役所前で30人が参加して控訴しないように宣伝行動をしました。

(2013年11月17日号「守る新聞」)

 
   
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