「このままでは、まだまだ死ねない。最後まで闘う」力のこもった声が会場に響きました―。昨年12月16日、老齢加算の減額・廃止を内容とする保護変更決定処分の取り消しを求めた裁判で、福岡高等裁判所は、原告らの控訴を棄却する不当判決を言い渡しました。(西野 武記者)
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敗訴に負けず最後まで闘う決意を述べる原告。阿南清規原告団長(右端)、左へ毛利吉彦さん、渡邊脩さん、平山フサ子さん、今村サヱ子さん、小簿留子さん、福地敏男さん(12月16、福岡県弁護士会館で) |
十分な審理尽くさず
2006年に北九州市在住の生活保護受給者41人が、同市を被告として、訴訟を起こし、約8年がたちました。原告は、闘争中に亡くなった人も出て、現在では、78歳から96歳までの33人。この日の判決を、傍聴者122人が見守りました。裁判長の「控訴棄却。訴訟費用は控訴人負担」というわずか30秒たらずの不当判決に、傍聴席に重苦しい空気が漂いました。
この後、福岡県弁護士会館で開かれた報告集会で、高木健康弁護団長は「極めて不当な判決。最高裁で、福岡高裁勝訴判決が破棄され、差し戻しとなり、今回の判決が棄却されたので、1審の福岡地裁(敗訴)の判決となった。最高裁の差し戻し理由は、客観的数値の合理性を審理せよと言うことだったので、当時の厚労省課長などを証人申請したが、裁判所は、実行しなかった。原告の意見陳述を毎回行っても実態の声を裁判官が 心から聞いてくれなかった。腹が立つが、今後も頑張りましょう」と語りました。
判決を受けて、原告団長の阿南清規さんは「十分な審理をつくせば老齢加算の廃止は違法であることが伝わったはず。体の続く限り上告して頑張りたい」と話し、毛利吉彦さんは「裁判長は中立だと思っていた。上告へ向け最後まで頑張りたい」と語りました。
平山フサ子さんは「怒りしか湧きません。私も体の続く限り頑張ります」とし、今村サヱ子さんは「8年頑張ってきたが、判決にがく然としました。これから生活はどうなるのかと心配です。最後まで頑張ります」と、それぞれが怒りを吐き出しました。
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駅前宣伝の後、福岡高裁に行進する原告団 |
根本を避けた判決
応援に駆け付けた井上英夫生存権裁判を支援する全国連絡会会長(金沢大学名誉教授)は、「判決は実態に踏み込まない、憲法25条とかけ離れたものです。実態を見ると、憲法にそぐわないことが分かってしまうので、根本的な所に触れずに判断しました。一方で、全国の個々の裁判(狭い意味での生存権裁判)、埼玉三郷、大阪枚方、大阪岸和田などでは、勝利が続いています。運動によって改悪生活保護法にも付帯決議を認めさせ、扶養は受給の要件ではないと明確化させました。審査請求では1万人を超えますます大きな力になっています。朝日訴訟を超える運動につなげましょう」と強調しました。
福岡生存権裁判
北九州市の生活保護受給者41人(現在33人)が2006年、北九州市を相手に老齢加算廃止取り消しを求めて福岡地裁に提訴。1審判決で敗訴、原告が控訴し、10年6月に福岡高裁で逆転勝訴。同市が上告。12年4月最高裁が福岡高裁判決を破棄、審理を差し戻す不当判決を出した。差し戻し審の福岡高裁で6回の口頭弁論で終結。12月16日に不当判決。
(2014年1月12日号「守る新聞」) |