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広島 国道高架裁判 会員が原告団長 工事中止求め最高裁へ 被害対象広がる 通勤者にも賠償

 広島市の中心部を通り、一日中、車の往来が絶えない国道2号線。観音高架周辺の騒音は、沿道の住民や事業所に働く人たちに健康被害を与えています。損害賠償と高架延伸工事差し止めを求めて、被害者が裁判闘争に立ち上がっています。一審では賠償が認められ、今年1月の二審はさらに踏み込んだ判決でした。最高裁に上告された生活者の権利を守るこの闘いには、生活と健康を守る会会員も名を連ね、頑張っています。その一人で原告団の鍛治川俊治団長は「生存権をかけている。引き下がるわけにはいかない」と強調してやみません。原告の意気は上がる一方です。(番匠 寛記者)

 闘いは現在の法廷闘争以前からの長い歴史があります。請願署名を集めて、まず1994年に広島県に意見書を提出しました。続いて、県の公害審査会への調停申し入れ、仮処分申し立てなどを行ってきましたが、住民らの願いは受け入れられません。2002年8月に広島地方裁判所へ提訴。国と広島市を被告とする裁判が始まりました。

損害賠償は確定

二審さらに前進

 一審判決(10年5月)は、原告36人に計約2160万円の賠償を命じました。対象は住民のみで、工事差し止め請求は認めませんでした。原告、被告とも納得せず、広島高等裁判所への控訴となりました。
 二審(14年1月29日)も工事差し止め請求は棄却しましたが、被害対象者の枠を住民以外、沿道事業所通勤者にも広げ、原告61人のうち53人に計約3500万円の賠償を命じました。さらに、夜間の騒音を我慢できる限度基準(屋内)を、一審の45デシベル以上から40デシベル以上に引き下げました。
 道路公害を巡る裁判は東京、名古屋、大阪、尼崎などで原告の住民側が勝訴。今回の判決はそれらに続くものですが、沿道の住民だけでなく、そこに働く人も損害を受けているという司法判断が示されました。
 判決後の報告集会で、山田延広弁護団長は「騒音被害の基準を下げ、勤務者にも認めた判決は、被害救済の枠を広げる」と述べています。
 判決に対して、被告は上告を断念。損害賠償は確定しました。しかし、工事差し止め請求は棄却されたため、原告側は2月12日に上告しました。
 高架化は騒音以外にもさまざまなやっかいごとをもたらします。会員で原告の坂田和子さんは、既高架化区間からそう遠くないところに住み、この間の地域の環境変化をつぶさに見てきました。
 かつては沿道に飲食店などが軒を並べていましたが、高架になったことで営業が成り立たなくなり次々と撤退。「何軒もあったラーメン屋が一件も無くなった」。商店は営業権を奪われました。

工事の是非問う

決意固める原告

 住民らに犠牲を与え、税金からは莫大な工事費(総事業費約550億円)が投入される高架化工事です。行政が財政難に苦しんでいる中での工事再開の是非が、今後の焦点となります。
 「補償金の多寡、金銭での解決ではなく、工事差し止めを勝ち取らねばならない。それを求めて最後までやる」(鍛治川さん)。
 和解の話も出ましたが、真の解決にはなり得ません。鍛治川さん、坂田さんら6人の会員を含む原告団の願いは一つ。今後も奮闘を続けます。


2号線一口メモ
前身は旧山陽道
大阪市と北九州市 結ぶ

 大阪市北区と北九州市門司区を結ぶ一般国道で、延長約530キロ。古代から存在した旧山陽道を前身とし、ほぼそれを踏襲している。
 観音高架延伸工事は広島市西区から同市中区までの約4・2キロ。すでに1・9キロの工事が終わり、03年から高架道路の供用が始まっている。残り区間は財政負担などを理由に市が同意を拒み、工事が中断している。

(2014年4月20日号「守る新聞」)

 
   
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