厚生労働省は、今年4月からの生活保護の実施要領で「就労や早期の保護脱却」に資する高校生のアルバイト収入は収入認定をしないとの改定を行いました。今回の改正により、就職のための自動車免許取得費用、就労に必要な資格取得のための大学、各種学校などに入学するための費用などについて、アルバイト収入は認定除外にすることにしました。今回の改定について、高校生を持っていた加藤さん、現在高校の在学生がいる田村さん、2人のお母さんの喜びの声を紹介します。
北海道・田村貴子(43)
入学金の足しにできたら
3人の子どもを持つ母子家庭の田村貴子さん(43)は、昨年次男と長女が道生連奨学祝い金を受け取り、親子ともどもうれしそうでした。
田村さんは、今回の課長通知で「高校生のアルバイトが少し緩和された」ことを知り、次のようにコメントを寄せてくれました。
「長男(21)も次男(19)もどうせアルバイトをしても制限があって、それ以外は引かれるなら勉強に専念してと思って、育ててきました。その次男が免許を取るのに苦労して、ようやくお金をためて、今自動車教習所に通っています。もし、高校生の時にアルバイトのお金で免許が取れたなら、そんなに苦労することがなかったと思います。今、長女が高校2年生で、わずかですが、アルバイトをしています。今はまだわずかしか働いていませんが、専門学校も視野に入れているようなので、少しでも貯金ができ、入学金の足しにできたらいいですよね」
生活保護法が改悪される中で、次の世代を担う子どもたちが少しでも安心して社会に羽ばたけるよう多くの母子家庭のお母さんたちは願っているのです。
(細川久美子通信員)
京都・加藤裕子(60)
多くの子どもの夢かなう
3人の子どもを一人で育てた加藤裕子さん(60)は、「高校生のアルバイト収入が認められた」との情報に、「よかった!」と顔を輝かせて喜んでくれました。
長男が高校在学中に「大学に行きたい。入学金はアルバイトをしてためるから」と言ったとき、加藤さんは生活保護を受けているから無理だとあきらめるよう説得したが、強い子どもの強い思いを受け止め、それなら一緒に頑張ろうと決めました。
ところがそのアルバイト収入が収入認定され保護費が減額。生活と健康を守る会の役員会に相談、審査請求をすることになりました。
「費用をくださいと言っているのではなく、自分で頑張ってためたお金で大学に行きたいのです」との長男の強い思いを込めた手紙を添えて提出。京都府から「却下」され、厚生労働大臣に審査請求、口頭意見陳述では、母としての思いを訴えました。いろいろな場所に出向いて多くの人たちの共感を得て、国会の質問でも取り上げられました。
訴えは退けられましたが、長男は奨学金などで大分県の大学に進学。今は、京都で働いて、一家の大黒柱として加藤さんを支えています。
あの闘いの後、「『生活保護の(勤労収入の)未成年者控除』が少し上がった時もうれしかったけど、今回の通知で多くの子どもたちが夢をかなえられるようになるね」と親子でしみじみと喜びをかみしめています。
(佐武志津子通信員)
(2014年5月11日号「守る新聞」) |