東京都の多摩地域西部にある日の出町は、2009年に75歳以上の医療費を無料化して5年になります。町が推進している健康事業「元気の種まき」との相乗効果で、一人当たりの医療費が減少。国が70歳から74歳までの窓口負担を1割から2割に引き上げる中、同町は、次へのステップ70歳からの無料化に踏み出そうとしています。全国の自治体から、視察団も来町するなど注目を集める日の出町を訪ねました。生活と健康を守る会会員の折田眞知子町議会議員が迎えてくれました。(西野 武記者)
町の人口過去最高更新
75歳からの医療費無料化は、2008年9月に青木國太郎前町長が敬老福祉大会で「日の出町発! 長寿化対策〜日本一お年寄りにやさしい町づくり」を宣言、09年4月からスタートしました。
宣言内容は(1)75歳以上の医療費を無料に、(2)75歳以上の人間ドック受診料を無料に、(3)健康教室を開催し、健康管理・増進を図る―の3つでした。
日の出町の人口は、08年には1万6000人を切っていましたが、14年には1万6958人(5月12日現在)と過去最高を更新しています。75歳以上は、2234人(3月末)で、町では、医療費にかかった領収証を町役場窓口に提出してもらい、毎月15日締めで、月末振り込みを実施しています。
今年3月に行われた町長選では、現職の橋本聖二氏が「70歳からの医療費無料化」を掲げて再選。実施へ注目が集まっています。
早期治療で医療費抑制
町民課後期高齢者医療係長福岡勉さんは「住民からは、『70歳からの無料化はいつから?』といった問い合わせもありますが、具体的にはこれからです」と話します。財源について「日の出町にはごみの最終処分場があり、地域振興費が支給されていて、医療費無料負担も約8000万円で予算の1%で済んでいます」と述べ、さらに「健康増進のための企画・里山ウオーキングなどの『元気の種まき』も好評です。健康増進と医療費助成は車の両輪で運用しています」と語りました。
同町の制度は、医療費無料化にとどまらず、高齢者が病院など外出がしやすくなるように町内4路線で60歳以上のバス無料化を実施しています。他にも高齢者だけではなく、「18歳までの医療費無料」「がん医療費の助成制度」があります。
折田議員は、「病気は、早期発見、早期治療が大切です。医療費の無料化で病院にかかるのを遅らせず、病気を長引かせないことで、医療費を抑えることができました。当初心配された医療費高騰にはならず、逆に健康増進へ目が向き、医療費抑制につながっています」と話します。
「本当に良かった」 橋本基、ちよ夫妻
日の出町に住む橋本基(はじめ)さん(76)とちよさん(76)夫妻が、制度について語ってくれました。
ちよさんは「去年75歳になったので、制度を利用して1年になります。今までは税金を払った恩恵を感じませんでした。私はパーキンソン病の難病指定を受け、その他の病気も患い、府中市の病院以外にも立川総合病院など4つの病院に通っています。バスや医療費の無料化はとても助かります」と話しました。
基さんは「私は、3年前に脳こうそくで入院。妻を介護していたので、ショートステイを利用してどうにか乗り切りました。妻がとても心配でした。医療費がかさみ無料バスも含め本当に良かったです」と語りました。
(2014年6月8日号「守る新聞」) |