経済的に困窮している家庭の小中学生へ学用品などを補助する「就学援助」が、生活保護基準の引き下げによって、今まで受けられていた子どもたちが受けられなくなる影響が出ています。神奈川県横浜市では、申請しても受けられなかった子どもたちが977人いました。神奈川県生活と健康を守る会連合会(神生連)は12月10日、改善を求めて市に要請しました。(西野 武記者)
文科省の通達を守って1.0倍(生活保護基準の)は低すぎる
懇談には、神生連から8人が参加、横浜市からは教育委員会事務局課長ら2人が出席しました。
就学援助の影響について市は、「国が3年間(3段階)で、生活保護基準引き下げを行っているので、市もそれに準じて、規定通り保護費の1・0倍で計算、対応している」と述べました。
会が、「基準の1・0は、他市と比べても低い。もっと引き上げを」と訴えると、市は「その他のもろもろの手当なども勘案すると1・0倍は一概にも低いとは言えないと考えている」と答えました。
市は「就学援助率は14・83%であり、予算について30億6700万円と、5800万円増額している」ことを説明。
「各学校や父母からも特別のクレームは入っていない」と付け加えました。
会が、文科省と交渉したときには、「全国に影響が出ないように通達を出した。実行しない自治体は残念だ」と答えていることを伝えると、市は「自治体の適切な判断をと言っているだけで、私たちにはそうは言っていない」という発言にとどまりました。
基準を元に戻すようにこれからも懇談続ける
今後の影響について確認すると、市は「次年度は、今年度水準を維持し、据え置く」と回答。
会はすかさず「3年度目も下げずに、むしろ元に戻すよう要請します」と強く訴えました。
同市は、文科省のアンケートに対して、就学援助制度以外の経済的に困窮している児童に対する取り組みを行っていると回答。この日の懇談で、具体的な内容を追及すると、「スクールソーシャルワーカー」や「よりそい型学習」など、どれも経済的な支援ではないことが明らかになりました。
懇談会に参加した、横浜協議会会長(8単組)の小野寺進司さん(70)は「文科省の通達を無視したと言う点で、冷たさを感じました。次年度の据え置きは当然」、神生連の岩崎幸雄会長(74)は「今後も懇談は続けていかないといけない」とそれぞれ語りました。
自治体4%に影響 文科省も通達
文部科学省の6月の調査で、全国1768自治体のうち、4%に当たる71市区町村で、就学援助が受けられない、もしくは縮小されたなどの影響が出たとしています。
その他の96%に当たる自治体は、生活保護の基準額に掛ける係数を上げたり、生活保護基準引き下げ前の基準で対応したりしています。
同省は、生活保護基準引き下げにより、就学援助に影響が出ないように各自治体に通達を出しています。
2012年度は、就学援助を受ける公立小中学生の割合が、全体の15.64%(155万2023人)に上り、調査以来17連続で上昇し、過去最高を更新していると発表しています。
(2014年12月28日号「守る新聞」) |