「住まいの再建を続けると同時に、孤立しがちな被災者への見守りなどの『心』の復興、農林水産業や中小企業など『生業(なりわい)』の復興にも、全力を挙げてまいります」―。安倍首相は施政方針演説でそのように語りました。いまさら言うまでもなく被災者支援は待ったなし。東日本大震災から間もなく4年になり、昨年夏の広島土砂災害はまだ記憶に新しいところ。いずれも復興はいまだ途上で、解決すべき課題は山積状態が続いています。(番匠寛記者)
わが家の道遠くハードル上がる
災害被害で人々の生活は一変します。日常生活を取り戻すのは容易なことではありません。行政の手厚い支援は不可欠です。
「一番大きな課題は、住まい」と岩手県の川口義治さん。仮設住宅は高齢者の単身世帯が多く、その場合、部屋は四畳半一間。ベッドやこたつを置けば、それでスペースが埋まってしまいます。復興公営住宅希望者が半分以上います。
自力での自宅再建はいつそれが実現するのか展望が見えません。行政による基盤整備は何年先になるか分からず、建築費は坪70万円、沿岸の山田町では80万円にまで跳ね上がっています。
現在でも1万3000人近くが暮らす宮城県石巻市の仮設住宅。老朽化が進み、床が傾くなどの問題が生じています。住宅再建に当たっての課題を庄司慈明さんに聞きました。
「自宅が流され、避難所生活も体験した。国には盛り土だけを支援する施策がなく、効果促進事業と言われる事業を利用するしかない。それでは使い勝手が悪すぎるということが当初から問題になり、いまだに解決されていない。そのような状況の中で頑張っているわけで、今からでも国の支援が必要だ。支援メニューがない被災地はずっと被災状態のままだ」
避難いつまで自宅に帰りたい
福島県では東電の原発事故による被害が深刻です。放射能汚染で多くの県民が県外を含む避難生活や家族の分散など、二重三重の苦しい暮らしを強いられています。にもかかわらず補償の打ち切りなど被災者の悩みは増すばかりです。
佐藤八郎さんは故郷の飯館村を離れ、福島市での仮住まいが続いています。「首相が言っていることはいい。しかし、現状は全く逆だ。いまだに本当のことが分からず、先が見えない」。
除染は進まず、帰郷のめどはたちません。
計画遅れも 復興住宅スローペース
復興庁によると、災害公営住宅と住宅用宅地の供給状況はいまだ低水準。岩手県の宅地供給はまだ進捗率が1桁台で、福島県では事業計画が未策定の地域が残されています。県別状況は次の通り。
岩手=住宅は15年度までに約3700戸(計画比約6割)が工事終了の見込み。全体計画数は約10戸減少。宅地は工事工程見直しなどにより、工事に遅れ。
宮城=石巻市での計画戸数増などにより、住宅計画数が約1万6000戸(約470戸増)に。宅地は15年度までに計画の約半数の5545戸が工事終了の見込み。
福島=15年度までに住宅約3900戸が工事終了の見込み。同年度で宅地は2050戸(全体計画数2060戸)に。
関係省庁に切実な声 支援金増額を
東日本大震災と昨年夏の広島土砂災害の被災者180人を含む400人が2月13日、被災者再建支援制度の抜本的見直しなど生活再建を図る中での必要不可欠な願いを、関係省庁にぶつけました。「国は被災者の声を聴け」と。
この日も焦点となったのはやはり住宅復興。交渉では、支援金の最高額を500万円(現行300万円)に引き上げるよう、強く求めました。対する国側の答は「他の制度とのバランスをとらないと」「慎重な検討が必要」といったものがほとんどでした。
(2015年3月8日号「守る新聞」) |