国は、2018(平成30)年から国民健康保険の運営を都道府県化(広域化)などの法案を今国会に提出し、成立させようとしています。広域化によって、国保税(料)の値上げなどが促進される下で、いま各自治体で国保税(料)が発表されています。政令指定都市で値下げした京都市、静岡市、堺市の取り組みを紹介します。
引き下げは世論と運動の成果
京都市
2015年度京都市予算案が発表され、国保料の引き下げが提案されました。
その内容は医療分、後期高齢者支援分、介護分にかかる保険料率を全て引き下げるもので、全てで保険料率を引き下げるのは初めてのことです。
これにより、被保険者一人あたり平均で2532円の保険料引き下げ、所得200万円の2人世帯で15850円が下がります。最高限度額の引き上げはあるものの、加入世帯97%が対象になります。また、保険料軽減措置の対象世帯の所得基準額改定により、保険料5割軽減、2割軽減措置の対象世帯の所得基準改定により、保険料5割軽減、2割軽減の対象者の拡大も打ち出されています。
高すぎる国民健康料の引き下げは市民の長年の願いであり、繰り返しその実現を求めてきました。国保料の引き下げを求めてきた世論と運動の成果です。
しかしながら、今回の提案は、歳入超過分(黒字見込み分)14億円について保険料負担減は7億円にとどめ、残り2分の1は一般会計繰入金の縮小に充てるものとなっています。これは、国保の都道府県化を前提とした自治体独自の繰り入れの後退を図る国の方針に沿うものであり認められません。市民の国保料引き下げの切実な願いに正面から応えるべきで、さらなる引き下げが必要です。
(大本義雄通信員)
国保料6年連続の引き下げ
堺市
堺市の2015年度の国保料は、当局の努力による基金の取り崩しなどで平均1814円の引き下げが決まり、これで6年連続の引き下げになり、引き下げ額は6年間で平均1万3000円余になり、多くの市民から歓迎の声が寄せられています。今から思い起こせば8年前に堺市内の民主勢力と日本共産党堺市会議員団を中心に、市民からの「国保料の引き下げをしてほしい」という声を受けて、政令市で一人当たり一番高い国保料の引き下げを求める請願署名運動を大々的に展開しました。署名数は8万人に迫り、堺市議会をも動かし、大きな影響を与えました。当時の堺市当局は、国保料の引き下げなんかとんでもないという立場でした。その後、2回にわたる堺市長選挙の闘いの中で少しずつ堺市当局の態度が変わってきたと思います。その後は毎年の国保料の引き下げにつながっています。また、堺市国民健康保険をよくする会(民商・民医連・医療生協・年金者組合・共産党議員団・生健会で構成)は、毎年堺市の国民健康保険課に要望書を提出し、交渉をしています。交渉では、引き下げになったとはいえ、まだまだ払いたくても払えない高い国保料の引き下げを求めるとともに、同時に、短期証、資格書、分納、差し押さえなどに対する人権侵害などの是正を求めて粘り強く運動しています。今後とも、安心して医療にかかれる環境をつくるために奮闘します。
(飛谷幹雄通信員)
署名運動が大きな力になって値下げ
静岡市
静岡市は2015(平成27)年度から一人当たり5300円の引き下げを行う見込みです。静岡生健会は長年高すぎる国保料引き下げを求めて運動してきました。静岡市の国保料は12(平成24)年度に3割引き上げて政令市の中でもトップクラスに高い水準になりました。静岡の市民団体と一緒に毎月1万6000筆の請願署名を市議会に提出してきました。
生健会会員の川根浩子(かわねひろこ)さんは、街頭宣伝、町内のお祭りなどで毎年、500筆を超える署名を集めてきました。今回、引き下げが決まり「『今まではいくら署名やっても値下げできないでしょう』と言われ続けてきたけど、今度は胸を張って『値下げできたよ』と言える」と喜んでいます。
子育て世代には年間40万〜50万円の保険料、就学援助利用の家庭には申請すれば半額の減免はあるものの利用者は限られています。今後も実態アンケートを集めるなど実態に基づく運動で国保料のあり方を変えていきたいと考えています。
(松田是卓通信員)
(2015年3月22日号「守る新聞」) |