生活保護の老齢加算廃止は生活保護法と憲法に反すると、2005年から9都府県113人が提訴した“生存権裁判”は、最高裁で3事件が原告敗訴、5事件が上告棄却、上告不受理となりました。最後の兵庫裁判は今、最高裁の第3小法廷に係属しています。7月27日、裁判勝利を訴えながら兵庫から東京・最高裁に向かう「中央キャラバン」(生存権裁判を支援する全国連絡会主催)の出発集会が、神戸市医師会館市民ホールで開かれ、100人を超す参加者で元気にスタートを切りました。
(小古間ゆりか記者)
「生存権にかかわる生活保護について、裁判所は厚生労働省に何も言えないのか。人間らしく生きる権利を奪う国に強い怒りを覚える」と、司法の責任を問う原告・勇誠人(いさみまさと)さん(86)の声が会場に響いた中央キャラバン出発集会。
集会は、松崎喜良(きよし)・兵庫支援する会代表世話人のキャラバンスタート宣言で始まりました。藤原精吾弁護団長は、「大阪高裁判決が示した国際人権規約・社会権規約の制度の後戻り禁止原則をキャラバンで訴えて、全国に知ってもらおう。力を出し切れば逆転もありうる」と報告。
生存権裁判を支援する全国連絡会・井上英夫会長、前田美津恵・全生連全国理事(全国連事務局長)が参加。井上会長が、「最高裁勝訴が新裁判の勝訴や社会保障制度後退阻止の大きな力になる。キャラバンを契機に署名や最高裁要請、裁判傍聴に力を集中し、国民の声を叩きつけよう」と訴えました。
各地の元原告らが激励に
最後の兵庫裁判の闘いを自分たちの闘いにと、岡山から大西幸一、「ささえる会」代表委員ら13人、福岡・北九州生存権裁判の元原告の今村サヱ子さん(87)と藤元共弘事務局長、広島から加藤清司元原告団長(90)ら3人が駆けつけました。
大西さんは「人間裁判」・朝日茂さんの闘いを紹介し、「朝日訴訟の経験に学んで運動を進めよう」と訴えました。今村さんの「福岡裁判は高裁で一度勝ったが、2度目の最高裁で上告棄却。兵庫裁判が頑張っているから、生活扶助引き下げ新裁判でもう一度闘うと決めた。一緒に頑張る」、加藤さんの「最高裁の門前払いは悔しい。ぜひ勝ってほしい」の言葉に、みんなが励まされました。
兵庫県社保協の井上義治副議長が、「当事者の訴えが国を動かす」と激励しました。
最高裁は原告の声を聞け
兵庫県生連では、この集会に向けて各地で6項目の市長要請行動を行い、神戸市協議会は7月26日保護課と交渉。「裁判中だから回答は差し控える」と言われ、引き続き市長要請に取り組むことが報告されました。
森口眞良(まさよし)県連会長が行動提起を行い、浜本喜美子理事が「最高裁は、憲法25条の示す生存権はすべての国民に保障されるべきという立場に立ち、大法廷を開き原告の声を聞き、国の政策の間違いを断じてほしい」との集会決議案を提案。満場の拍手で採択し、35日間のキャラバン行動で全国で最高裁を動かす世論づくりの決意を発信しました。
7月27日朝、「人間らしく生きたい!人間裁判」をささえる岡山の会では、岡山県早島町にある「人間裁判」の碑前に集まり出発式。その後、代表13人が車に横断幕をつけ、兵庫へ向かいました。
(2016年8月7日号「守る新聞」) |