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市職員 服に脅し文句 利用者を威嚇・侮辱 生活保護 小田原でも人権侵害 生存権軽視許さない

 神奈川県小田原市の生活保護担当職員が、「保護なめんな」などの文字がプリントされたジャンパーを着用し、保護利用者の家庭訪問などの職務に就いていました。憲法順守を義務付けられている公務員には許されない行為で、生活保護行政を担う資格が問われます。事件が報道されるやいなや抗議行動などが繰り広げられ、その流れが広がっています。市は誤りを認め、検証作業や職員の人権意識を高める研修などを実施します。(番匠 寛記者)

 ジャンパーは2007年に当時の保護係長が企画。これまでに64人が自費で購入し、現職33人中28人が所有と報導されました。エンブレムに「保護なめんな」と記され、背中には「我々は正義」など利用者を威嚇するかのような言葉が英語で書かれています。
 生活保護問題対策全国会議(全国会議)の稲葉剛幹事は「制服のような揃いの形自体がまず問題」と指摘します。生活保護担当とわかる自治体職員の家庭訪問で、その家庭が保護利用と推測できるからです。利用者のプライバシー侵害にほかなりません。自治体によっては制服を含むそのような衣服の着用や、自治体名の書かれた車使用に制限を設けているところもあります。

市、防止策実施へ

検証作業、研修

 事態発覚後、市への抗議、実態究明と再発防止を求める取り組みが進んでいます。
 小田原市の生活保護行政は、ホームページの生活保護欄に扶養義務や資産の扱いなどについて一部誤解を招く記載(問題発覚後に訂正)があるなど、ジャンパー以外にも問題点があります。それらも踏まえて全国会議は1月20日、加藤憲一市長宛ての公開質問状を郵便で送付。24日には市の福祉健康部長、市民部長らと懇談・意見交換しました。
 懇談・意見交換は非公開で行われ、終了後に全国会議が記者会見し、概要を明らかにしました。
 市は「重大に受け止めている」とし、質問状については2月中に回答することを約束。いくつかの再発防止策を示しました。
 防止策の一つ、検証作業について福祉健康部長は私見と前置き、メンバーに外部の第三者を加えたいとの考えを示しました。
 人権研修は福祉部門だけではなく、全職員を対象とすることも検討されています。
 懇談・意見交換に参加した全国生活と健康を守る会連合会の安形義弘会長は記者会見で、次のように話しました。
 「生活保護を巡っては全国で人権侵害が多発し、ジャンパー着用は重大な問題。本来あるべき福祉行政がなされていないことに構造的な要因がある」

高まる抗議の声

調査団も結成へ

 地元の神奈川県内では1月19日、神奈川県生活と健康を守る会連合会、小田原地域生活と健康を守る会、神奈川県社会保障推進協議会などによる市への抗議に続き、31日には小田原地域生健会が理事会で今後の対応を協議。まず会員・読者の中の生活保護利用者に話を聞くことになりました。
 理事会では、ジャンパー姿に違和感を感じたという発言がありました。「(どんな文章が書かれているかまでは分からなかったが)人を小馬鹿にしているようなものを着ているな」。
 県レベルでは今後、広く他団体などに働きかけ、調査団結成の意向です。
 動きは全国に広がりつつあります。山梨県生活と健康を守る会連合会は1月27日、大月市に全生連の声明(1月20日)を渡し、「権利侵害に強く抗議」との見解を伝えました。
 社会福祉士で組織する団体も事態を憂慮。「不適切なジャンパーを着用」として、声明を発表しました。
 神奈川県社会福祉士会は「『社会福祉士会の倫理綱領』に沿って、適切な支援が行われるよう関係各所に働きかけていく」(1月19日)としています。日本社会福祉士会は「国民にとって『最後の砦』である生活保護制度が、専門性に裏打ちされた適切な運用がなされるよう、関係行政機関に要望」(1月21日)とまとめています。

(2017年2月12日号「守る新聞」)

 
   
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