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3・11東日本大震災・大津波から7年目に 望まれる 復興の“速度” ―住民の目線に立って― 岩手県大槌町

 2011年3月11日、東日本大震災で大津波に襲われ、町長をはじめ40人の役場職員と町民合わせて1285人が犠牲になった岩手県大槌町。釜石・大槌生活と健康を守る会の菊池公男さんの7年目を迎えた町の状況の報告です。

 大槌・吉里吉里(きりきり)班は2月25日、8人で班会を開き、近況報告で話がはずみました。
自宅を再建し、仮設住宅を出て新居に入居した会員は4人。3月には最年長の平野サワさん(87)が、吉里吉里第6仮設住宅から防災集団移転宅地に新築した自宅に入居します。
 ここには、仮設住宅で一緒に過ごした人たちも多く入居する予定だそうです。一人暮らしの平野さんは、「自宅が完成したら、仮設住宅から出たくなくなった。うれしいけど、毎日集会場に行っておしゃべりしたり近くで買い物もできた今までの生活が一変するのがとても不安」と、複雑な心境を語ります。

町のトップを失って

遅れた復興のスタート

 大震災から6年の間、トップを失った大槌町の復旧・復興事業は、他の自治体に大きな後れをとりました。
 11年2月に1万5994人いた町の人口は、16年5月には1万2314人と、3500人も減る深刻な事態となりました。復興の遅れから経済力のある町民は、都市部の盛岡市や花巻市などに流出していく状況が続いています。人口流出に歯止めをかける対策が急務となっています。
 役場付近では災害公営住宅や個人住宅の建設が行われていますが、旧大槌中学校跡地に建設中の県営災害公営住宅・屋敷前団地は、3DK(3人以上)で家賃が7000〜6万6700円となります。「収入が少なく、家賃が高くて入れない」と、希望者は少ないそうです。

病院再建、新校舎完成

町づくりはこれから

 JR山田線の宮古駅―釜石駅間は三陸鉄道に引き継がれ、19年3月に開通予定ですが、大槌駅建設は年度内に策定ということで動き始めたばかりです。
 昨年5月の県立大槌病院の再建が、町民に希望を与えていますが、夜間の緊急診療は行っていません。
 昨年9月に小中一貫校の「大槌学園」の新校舎が完成し、11月に落成式が行われました。吉里吉里地区には同じく一貫校の「吉里吉里学園」があります。
 いろいろな分野で少しずつ復旧・復興が進んでいますが、本格的な町づくりはまだまだ先になる見通しです。
 現在国会で論議されている17年度予算で地方財政計画の東日本大震災分は、昨年度比4957億円減の1兆2842億円に留まっています。復興の速度が望まれる今、大幅な予算の増額が必要です。


犠牲者の“生きた証”

聞き取りして回顧録に

 2月19日、蓮乗寺・大念寺・吉祥寺で預かり供養していた大震災の身元不明者の遺骨が、城山公園に完成した納骨堂に70柱納骨されました。
 吉祥寺の高橋英悟住職が会長を務める「生きた証プロジェクト協議会」は、14年度から大震災・津波の犠牲者1285人のうち約650人の遺族から聞き取りを行い、菊池さんも協議会の会員として関わってきました。
 故人の生い立ちや思い出、震災時の状況、証言者の伝えたいことなど“生きた証”544人分を収めた『生きた証 東日本大震災犠牲者回顧録』がこの3月に発刊されました。

(2017年3月12日号「守る新聞」)

 
   
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