松本生活と健康を守る会の中嶋幸子さん(69)と伊藤嗣三さん(74)が、昨年7月の松本市国民健康保険税の大幅引き上げ(前年比13・9%)に対し10月、「生活を圧迫する国保税は憲法違反だ」として行政不服審査請求を市に提出。今年の3月27日、口頭意見陳述が行われ、中嶋さんが陳述内容と当日の状況を寄せてくれました。
私たちに届いた市の「弁明書」は、値上げの経過を説明し、「国保税額の計算は間違いがなく、違法性・不当性はない」というもの。これに対して「反論書」を提出し、口頭意見陳述を要望しました。
県下の19市で一番高い国保税
3月27日の口頭意見陳述で、私たちは「税額の計算違いを指摘したのではない。今の国保税がいかに高く、市民の生活を脅かすものであるかと、憲法25条で保障された健康で文化的な最低限度の生活ができなくなっていることを申し立てた」と主張しました。
私は収入に占める税負担の重さを訴え(別項)、伊藤さんは「国保制度は社会保障であり、引き上げは憲法25条違反。長野市は保険収入の20%を市からの繰入金でまかなっている。松本市の繰入金は収入の10%で、しかもこの12年間に6回繰り入れているだけ。長野市に比べて少なすぎ、県下19市のうち一番高い国保税になった。引き上げを撤回してほしい」と陳述しました。
市保健課から5人、審理員2人が対応し、質問を促されたので「減免条例があったら提出して」「松本市と長野市と比較して、法定外繰入金1世帯当たりの繰入率の過去5年を比較して数字で示してほしい」と要求。市は「4月27日までに審理員に提出し、本人に送付する。その後意見をもらってやりとりする」と約束しました。
都道府県化に運動を広げる
国保税についての審査請求や口頭意見陳述は松本市では初めてとのことでしたが、約1時間半の時間が保障されました。昨年の行政不服審査法の改定で、市と陳述人の間に審理員がいて、両方の意見・質問を公平に聞き、市が回答するよう促してくれました。伊藤さんは「市の担当者は誠実に答えていたが、県内で一番高い国保税に対する対応策は持っていないと思った」と感想を話しています。
市は、「都道府県化になっても、国保税の計算は急には変えられないので今まで通り」と言っています。繰入金は長野市並みにし、減免条例は低所得者に該当するように範囲を広げるよう、社会保障推進協議会とともに運動していこうと話し合っています。
年金の21%が税に医療・介護に不安
松本市 中嶋 幸子
私は、月15万円の年金収入から、国保税と消費税が1万円ずつ、介護保険料・市民税・固定資産税が1万2000円を負担しています。各種税金の負担額は、なんと収入の21%という重税です。
税引き後の11万円が生活費となり、足りない分はわずかな貯蓄からおろさざるを得ない状況です。
しかも、年金は物価の高さに関係なく毎年引き下げられ、各種税負担は増えています。加えて、医療費や介護利用料の負担もますます重くなってきています。日々年を重ね、体力が衰えていくこれから、病気になったら医療費が払えるのか、介護施設の利用料は払えるのかと不安な思いに駆られます。
聞くところによると、国保税納付書が市民に届いた昨年7月に、市民から3000件もの問い合わせが殺到したとのことでした。市民の多くの人から、「高すぎる」「とても払いきれない」との声が寄せられたのではないかと思います。
国に対し半減した国庫負担金を倍加するよう意見書を上げるとともに、市の国保財政への繰入金を増やし、市民の負担を減らしてください。保険税の減免規定も市独自のものをつくり、低所得者対策を行ってください。
(2017年4月16日号「守る新聞」) |