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教育勅語 「戦争する国」の“人材“づくり 安倍政権による 復活を許さない子どもと教育全国ネット21事務局長 俵 義文

 戦後、廃止された教育勅語。戦争につながる危険な中身と、安倍政権の復活させようとする動きを書いていただきました。

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「教育勅語」って何だろう

 1889年2月、大日本帝国憲法(明治憲法)が発布され、翌90年10月30日に明治天皇の名で「教育に関する勅語(教育勅語)」が発布されました。
 教育勅語(以下、勅語)は君主である天皇がその「臣民」(天皇の支配下にある人民)に守るべき徳目を要求した言葉です。勅語が臣民に求める「父母に孝行、兄弟姉妹仲良くし、夫婦互いに睦び合い」(文部省訳)などの徳目は、すべて「一旦緩急(かんきゅう)あれば(戦争になれば)」天皇(国家)のためにすすんで命を投げ出す、という道徳を身に付けるため、という構造です。
 発布の1年後には小学校教則大綱で「修身」(今日の道徳にあたる)は勅語の趣旨に基づいて教えることを定めました。そして、国定教科書「修身」の4・5・6年生用には最初のページに勅語が掲載され、子どもたちに勅語を暗記・暗唱するよう指導し、勅語は「御真影(ごしんえい)」(天皇・皇后の写真)と一緒に校内の奉安殿(ほうあんでん)に祀(まつ)られていました。
 この勅語と「筆頭教科」の修身を中心とした教育によって、子どもたちは「軍国少女」「軍国少年」として育てられ、非常時には命を投げ出せという勅語の教えの通りに戦場に駆り出されたのです。

戦後の教育勅語排除・失効決議

 1947(昭和22)年に憲法・教育基本法が施行され、翌48年6月19日、国会で勅語の排除(衆議院)、失効(参議院)決議が行われました。衆議院の排除決議は、勅語の「根本的理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明らかに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残す」とし、「政府は直ちにこれらの謄本を回収し、排除の措置を完了すべきである」としました。
 この衆議院の決議を受けて、当時の森戸辰男文相は「教育勅語は明治憲法を思想的背景といたしておるものでありますから、その基調において新憲法の精神に合致しがたいものであることは明らかであります。教育勅語は明治憲法と運命をともにいたすべきもの」と述べ、「将来濫用される危険」のないようにすべきと主張していました。

学校の教材に教育勅語容認の閣議決定

 安倍政権は、2017年3月31日、「憲法や教育基本法等に反しないような形で教育に関する勅語を教材として用いることまでは否定されない」と閣議決定しました。この閣議決定は、教育勅語の復活をねらうものであり、「戦争する国」の教育をめざす、道徳の教科化や新学習指導要領(指導要領)と一体のものだといえます。
 菅義偉官房長官は、勅語の「親を大切にする、兄弟仲良くする、友達を信じ合う」などを道徳の教材として勅語を使ってよいと主張し、稲田朋美防衛相は、「教育勅語の精神である親孝行など、核の部分は取り戻すべきだ」と答弁し、松野博一文科相は、「教育勅語を授業に活用することは、適切な配慮の下であれば問題ない」といい、義家弘介文科副大臣は、森友学園の幼稚園で勅語を朗読するのは「教育基本法に反しない限りは問題ない行為」と答弁しました。
 戦前・戦中の修身の復活ともいえる「特別の教科 道徳」を筆頭教科とする授業が、18年4月から小学校で始まりますが、それを前に、修身教育のもとになった勅語の復活が画策されていることはきわめて重大なことです。

内容を教材として使うことは許されない

 安倍政権や自民党の政治家たちは、勅語の「親孝行や兄弟仲良く、夫婦相和し」などの徳目は今日でも通用する普遍的なものだと主張しています。だから、勅語の徳目は現在でも通用する、学校で教材として教えてもよい、道徳教育の最良の教材だということです。
 しかし、はたしてそうでしょうか。前述した内容と構造からみても、勅語は日本国憲法や教育基本法とは相容れません。排除決議の趣旨説明で、松本淳造衆院文教委員長(当時)は「勅語という枠の中にある以上、勅語そのものが持つ根本原理をわれわれとしては現在認めることができない」と述べています。勅語全体の構造を抜きに部分だけ取り出して、「いいところもある」「普遍的」なものとするのは誤りです。
 勅語がいう親子・夫婦・兄弟などは、明治憲法と旧民法下での家族関係であり、父親や夫への絶対服従、長子相続の原則における関係です。どんなにDVの父親や夫にも黙って従え、長男には逆らうなという絶対服従の「道徳」なのであり、日本国憲法の下では相容れない徳目なのです。勅語の徳目は決して「普遍的」なものではないのです。
 仮に、親孝行や家族愛などの徳目を道徳教育で教えたいのであれば、排除・失効決議によって効力が消滅し森戸辰男氏がいうように「明治憲法と運命をともにいたすべき」勅語を教材にする必要はありません。勅語を容認する閣議決定をしたのは別の意図・目的があるとしか思われません。
 「戦争する国」の「人材」づくりの道徳教育に森友学園のように勅語を使いたいということであり、その復活を許してはなりません。


たわら よしふみ
 1941年福岡県生まれ。64年中央大法学部卒。出版社勤務。家永三郎教科書裁判を支援。98年に家永裁判32年間の成果と運動を引き継ぐ「子どもと教科書全国ネット21」結成に参加、事務局長に。

(2017年5月14日号「守る新聞」)

 
   
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