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小田原ジャンパー事件 もう繰り返さない 市、生活保護行政改善に着手 なるか新モデル構築

 憲法25条に規定された生存権を尊重し、人権侵害を防止しようとその体制構築が進んでいます。担当職員が所有・着用したジャンパーを発端に利用者威嚇・不在の実態が次々と発覚した、神奈川県小田原市の生活保護行政が今、改善に向けて新たな一歩を踏み出しました。これまでにはなかった手法も取り入れた、取り組みの経緯や現状などを紹介します。(番匠 寛記者)

対応はスピーディー

随所に先進的試み

 市の対応はスピーディーでした。現行生活保護行政に批判的なメンバーを交えた「生活保護行政のあり方検討会」(井手栄策座長=慶大教授)を立ち上げ、事件を検証。改善策をまとめました。
 改善策の一部はすでに実施。今年度からケースワーカー(CW)は法定の30人体制に増え、以前は30〜40%にすぎなかった申請から14日以内の決定が、4月は14件中13件となりました。
 「義務の羅列で、申請を諦めさせるような内容」との批判が多かった「保護のしおり」は全面改訂です。冒頭の一文に「『健康で文化的な最低限度の生活』を保障する日本国憲法二五条や生活保護法で定められた制度」と明記。「援助が受けられるよう親族と良好な関係を」という義務項目は削り、車やバイクの保有は「認められる場合もあり、ご相談ください」としました。
 文章は行政用語が日常用語に変わり、分かりやすくなりました。
 職員対象の人権講座は4月以降、隔月ペースの開催です。
 4月30日には、市主催の生活保護行政のあり方シンポジウムがありました。
 パネルディスカッションでは2人のパネリスト、検討会メンバーも務めた和久井さんと、現職CWで全国公的扶助研究会副会長の渡辺潤さんがともに口にしました。「報告書は骨格。魂を入れないと」。渡辺さんは「見えないジャンパーを着る自治体は多い」と指摘。行政と市民をつなぐ福祉オンブズマン制度導入を提案しました。
 加藤憲一市長は「今回の問題は大きな一石となり、窓を開いてくれた」と述べました。
数々の改善策は現在進行形。魂が入るか否か、真価が問われるのはこれからです。

神奈川県連も即動く

他団体と力合わせ

 事件発覚以降、神奈川県生活と健康を守る会連合会と地元の小田原地域生活と健康を守る会も、全容究明と再発防止に向けて、さまざまな取り組みを進めています。
 発覚直後の1月19日には、神奈川県社会保障推進協議会、神奈川県民主医療機関連合会などとともに、市に抗議文を提出。提出メンバーは続いて、弁護士も交えて調査団を結成しました。
 調査団は検討会を毎回傍聴するなど、事態の推移を注視。5月26日には市との懇談を予定しています。


これまでにない温かさ

しおり刷新

 表紙の絵は職員が描いたという「保護のしおり」。神奈川県生連の関美惠子事務局長は次のようにコメントしています。
 一目見て、まず表紙にこれまでとは違う温かさを感じました。中身も憲法や生活保護法の文言がきちんと記されています。検討会で井手座長に渡した、「いい」と言われている千葉県浦安市の「保護のてびき」を参考にして、作成されたのは間違いないでしょう。まだいくつか改善の余地もあると思いますが、「まずはいいものができた」と評価します。

(2017年5月21日号「守る新聞」)

 
   
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