豪雨災害から3年半
安心して住み続けたい
復興へ住民の声を聞いて
広島・安佐南
2014年8月20日、広島市は集中豪雨による大きな土砂災害に見舞われました。犠牲者は全市で77人、そのうち安佐南区の佐東地区では66人でした。あれから3年半、1月19日佐東公民館で広島土石流災害対策現地連絡会による「佐東地区まちづくり学習会」が開かれました。
当時、安佐南生活と健康を守る会は被災者支援にいち早く立ち上がり、復旧に力を入れてきました。
広島市には1万9000か所の土砂災害危険区域があり、急傾斜危険地域指定が公表されなかった所で被害が大きかったことから、指定の見直しや公表がされました。25基の防災ダムが建設され、土石流に押し流された被災地はほぼ復旧。しかし、住宅が再建できない住民は相当数、「大規模災害避難道路」の建設で立ち退きを迫られ、補償問題が未解決の人もいます。
人為的因子が招いた大災害
このような現状の中で、学習会には三十数人が参加。国土問題研究会理事で防災士の越智秀二さんが講演しました。広島は1999年6月29日にも豪雨災害に襲われ、危険地域対策の必要性などが叫ばれていました。越智さんはこの災害と比較して「今回は破壊力の大きな土石流により、77人もの犠牲者を出す大災害になった」と振り返り、「さまざまな因子が重なった災害。とりわけ社会的因子、人為的な因子によって、より重大な結果を招いた」と分析しました。
藤井とし子副会長(広島市会議員)は、「予算上、完成まで100年かかると言われた防災ダムは、予算を倍増し2年で25基完成した。八木〜長束道路の延長工事は災害復興に便乗し進んでいる」と復興状況にふれながら、「『復興まちづくりビジョン』は示されているが、被災者に焦点を当てた援助は不十分」と問題点を指摘。「義援金63億円のうち53億円が被災者支援に充てられた。残る10億円の第4次配分も、住民や被災者と話し合い、適切に活用してほしい」。
人・金増やしまちづくりを
被災者の男性は「急傾斜地で麓(ふもと)の学校への避難は厳しかった。屋上などに緊急避難できる鉄筋の建物がほしい。避難道路の延長は地域にメリットがない。もっと住民の声を聞いて復興を進めてほしい」と訴えました。
災害への備えを私たちはとかく忘れがち。住んでいる地域の地形と安全な避難ルートを把握する大切さを再認識しました。命を張って現地調査や研究を進めている越智さんの活動にふれ、「安心して住み続けられるまちづくりに、広島市は人もお金も増やしてほしい。生健会も医療生協などと共同して、まちづくり活動を進めたい」と思います。(牛尾清彦通信員、鈴木直子さん)
現地での自宅再建ならず
最後の一人まで支援を
被災者 大植おおうえ 和子さん (64)
早朝に大量の土石流が流れてきて、夫と必死で脱出しました。大規模半壊でしたが「現地での自宅再建」はならず、不本意ながら住み慣れた土地を離れて自主避難。そして、降りかかる火の粉を払うような日々を過ごしてきました。
月に一度は被災地に足を運びますが、今もつらい思いがよぎり、近所の人たちとも話し合っています。自主避難者支援運動や広島県災対連、ボランティアの方々の後押しには感謝しています。
国や自治体は、被災者の最後の一人まで支援を続けてほしいと思います。
(2018年2月18日号「守る新聞」) |