弱者に重い負担
国保は矛盾だらけ
払いたいのに払えない
「払いたいのに、とにかく高過ぎてとても払いきれない」―。そんな声をあちこちで聞き、そのトーンは高まるばかりの国民健康保険。国民の命を守る必要不可欠な、社会保障の柱の一つが、皮肉なことに国民生活を圧迫しています。加入者の多くは収入がそう見込めないリタイア世代や非正規労働者とあって、事態の深刻さは増すばかりです。
国保税・料負担額計算方法は、協会けんぽが収入に対して計算するのに対し、収入のない子どもにも均等割を加算しています。そのため収入が同額であっても、子どもが多い世帯ほど負担が重くなる仕組みになっています。さらに、全額が加入者負担。それらが絡み合って、加入者を苦しめています。
引き上げラッシュ
理不尽なケースも
生活を脅かす保険税・料。多くの自治体で上がり、黒字でも引き上げという理不尽なケースもあります。
額の高さは19年連続の引き上げで都内有数レベルという東京都足立区。加入者に6月中旬、保険料通知書が届きました。すぐさま区役所には区民から苦情が殺到。その数は6000件を超えたということです。そんななか、足立生活と健康を守る会も参加する、くらしと営業を守る足立連絡会と足立社会保障推進協議会は6月29日、「国保なんでも相談会」を開きました。
年金は減り、介護保険料は不名誉なことに23区で最高水準。それに追い打ちをかける国保料引き上げです。たまったものではありません。相談会には雨にもかかわらず4人が訪れ、口々に苦境を訴えました。「年間68万円もの請求がきた」「収入の3か月分も払わないといけない」「もうどうしたらいいか分からない」―。
大勢の国保加入者が困り果てています。足立連絡会は相談会を開くだけでなく、区への要望書提出・懇談申し入れなど取り組みを強めています。
国保に的を絞った相談会は今回が初の試み。NHKの取材もありました。
所得割の医療分・支援分は少し下がりましたが、医療分の最高限度額が3万円も増え、最高限度額が96万円になった広島市。所得や家族構成によっては安くなる世帯もありますが、世帯所得が200万円に過ぎない40代夫婦で年間保険料が30万円を超えるケースも。これではとても生活が成り立ちません。
2018年度国保決算は黒字で、前市長が「19年度は18年度並みで対応できるのでは」と議会で答弁していた大阪府八尾市。ところが市長選挙後に事態は一変。維新の会の新市長は就任早々に引き上げを提案し、加入世帯のほとんどが負担増を強いられています。
6月議会での「決算の黒字と積立金活用で引き下げ可能」との野党議員の追及に、市は「残ったお金は今後に残しておく」と答弁。市民の願いに背を向けました。
寝耳に水の引き上げに、国保加入者は到底納得できません。個人請願などの運動が起こっています。八尾生活と健康を守る会は運動のリード役の一員です。多彩な取り組みを繰り広げています。
(阿久津豊通信員、牛尾清彦通信員、鍛治川俊治通信員、吉川 均通信員)
保険証はあっても
受診抑制し死亡
医療保険に関してショッキングなデータがあります。全日本民主医療機関連合会によると、経済的な困難から、病気にもかかわらず医療機関の受診が手遅れになり、昨年1年間に77人が死亡しました。半数の39人は正規保険証所有もしくは生活保護利用者で、保険証所有者の多くは国保加入者でした。税・料の負担が家計を圧迫。受診抑制につながった、と分析しています。
調査対象は全国加盟事業所、病院・診療所636か所で、医療機関すべてではありません。ということは、もっと多くの人が受診抑制で死亡という最悪の結末を迎えているのではないでしょうか。東京民主医療機関連合会は「高い国保料(税)の軽減、重い窓口負担の軽減を図り、国保法44条(窓口負担軽減)、同77条(保険料軽減)の適応拡大も求められます」と提言しています。
(2019年7月28日号「守る新聞」) |