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生活保護基準引き下げ止めよ、口頭意見陳述

人間らしい暮らしを取り戻そう

北海道生活と健康を守る会連合会

 北海道生活と健康を守る会連合会では、昨年10月の生活保護基準引き下げに対し1003人が審査請求を行いました。8月1日、審査請求の口頭意見陳述が札幌市内で4時間にわたり行われ、審査請求人39人、代理人10人、補佐人35人の計84人が参加。また全道から招集された処分庁は27地域から54人と審理員3人、道庁職員2人が参加しました。

 三 陳述は参加した請求人全員(代読5人)が行いました。
 「生活保護を利用して生活が安定し、医療費の不安が解消された。本当に助かった」。だからこそ「生活で困った人が気軽に利用できるよう、もっと良い制度にしたい」「せめて2013年7月以前の水準に戻してほしい」と訴えました。
 そして、13年の引き下げに対する「新・人間裁判」が進行中であるにもかかわらず、「5年ごとの見直し」がきたからと基準を下げる、しかも、生活実態を聞かず、検証もしないで決め、引き下げを「基準改定による」の一言で行った行政へ批判の声が上がりました。

節約は限界です

当事者の実態を聞け

 陳述した人の中から3人を紹介します。
 札幌市中央区の村上朱美さん(43歳、中3と小6の子がいる母子世帯)は「子どもは2人とも療育のデイ・サービスに通っていて、楽しい行事が組まれますが、参加費がかかるので参加させてやれずに不憫(ふびん)です」「中3は『ピアノを習いたい』と言い、小6は色感が高く教室に通わせていたけど、今は中断しています。子どもにはチャンスを与えてやりたい」と陳述しました。
 同東区の吉澤哲雄さん(70)は「閉塞性動脈硬化症や糖尿病で働けなくなった。毎日、3回のインシュリン注射を打ちながらの生活です。医者からは食事に気をつけ野菜をたくさん摂るように言われているが、野菜は高く、今の保護費では十分に摂ることができない。安いのでモヤシとキャベツが多く、今日も明日もモヤシとなるのが珍しくありません」。
 西区の高坂千秋さん(53)は「糖尿病を患っており、医者から食事指導を受け、野菜サラダを作って食べていたが、野菜の高騰と保護費の引き下げで節約せざるを得なくなり、野菜ジュースに変えた。安売りしている店まで自転車で往復40分かけて行っている」と実情を話しました。

理由通知に不備

三重、滋賀のような英断を

 3人の代理人(弁護士)が陳述しました。
 横山浩之弁護士は、生活保護費設定の厚生労働大臣の裁量について言及。「13年の引き下げに厚労省が独自に用いた『生活扶助相当CPI』を今回は使っていないが、同じように使えば物価は高くなっているのだから、保護基準は引き上げられるべきであった。厚労省の算出方法は首尾一貫性の要請に反しており、裁量権の逸脱・濫用(らんよう)が認められる」と主張しました。
 長坂貴之弁護士は、国際社会権規約2条1項が、締約国に対し権利の実現を「漸進(ぜんしん)的に達成する」ために行動をとる義務を負わせており、その趣旨から、制度後退を禁止原則としていることを上げ、「生活保護の引き下げ処分は国際法違反である」と主張しました。
 最後に渡辺達夫弁護士が「生活保護法第24条で、書面による理由の通知が必要とされているが、処分庁の通知は『基準改定により』としかなく、内容が全く伝わらない。これは法24条および25条、並びに行政手続法14条に反しており、違法である」と訴えました。
 そして、三重県行政不服審査会の答申、滋賀県の審理員の意見書の実例をあげ、「本件でも、三重県や滋賀県のような英断を望む」と強く主張しました。
(岡ア恵治通信員)

(2019年8月25日号「守る新聞」)

 
   
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