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裁判勝利から福祉行政改善へ

福島市で生保裁判連第25回総会

 全国生活保護裁判連絡会(生保裁判連)は、生活保護での人権侵害が横行し審査請求や裁判が広がる中、1995年に結成されました。同会の第25回総会・交流会が10月19日、福島市内で行われ各地から70人が参加。高校入学の際に支給された給付型奨学金が福島市によって収入認定され、裁判を闘い勝訴しましたが市は謝罪すらしない中、裁判支援とその後の活動について報告されました。(前田美津恵記者)

 最初に「子どもの貧困と生活保護」と題して、首都大学東京人文社会学部教授の阿部彩さんが基調講演。生活保護基準部会の委員であったことも触れながら、「子ども自身の生活費の考慮が必要」と問題提起しました。
 福島奨学金問題での特別報告は、当事者Nさんの「裁判で勝訴したことは通過点に過ぎず、ここからが正念場」との手記(2面参照)を佐藤政子さんが代読し、西沢桂子弁護士が報告しました。「ジャンパー事件」のあった神奈川県小田原市から、この間の改善について市の企画部と福祉健康部の職員2人が報告しました。
 午後にあった2つの分科会のうち、生活保護の「運動」から紹介します。

謝罪せず対話も拒否

 Nさんの裁判支援と福島市の生活保護行政の改善を求めて運動しているエバーグリーンプロジェクト世話人の弦弓高明さん(福島県生活と健康を守る会連合会事務局長)が、「奨学金事件」の運動面について報告しました。
 2014年4月、高校に入学し支給された2つの奨学金が収入認定された事件は、Nさんが福島市生活と健康を守る会に相談したところから始まりました。弁護士と連携すると同時に福島市生健会が中心となり支援する会を結成。審査請求や裁判を支援する中で、この事件にとどまらず、子どもの夢と希望を枯らさずに育むことを願って活動するエバーグリーンプロジェクトへと発展させ、今日に至っています。
 18年1月16日、給付型奨学金の福島市による「取り上げ」に対して、福島地裁は違法であるとし、損害賠償を命じました。
 闘いの到達点は(1)厚生労働大臣による裁決と判決の確定により、制度化には至らなかったが給付型奨学金を収入認定から外すことは当然という社会的合意を形成(2)不充分だが福島市の生活保護行政に微妙な変化が生まれている、などです。
 判決後、福島市に対話の場を求めても市は拒否しています。また、Nさん母子への謝罪を、奨学金の取り扱いを厚労省次官通知と同等にすること、ケースワーカーを増員し研修することなどを求めていますが、福島市は「判決は重く受け止めている」「要請についてはご意見として承る」とするだけです。
 今年6月には「奨学金などは原則、全額収入認定除外をしている」と回答。その他『保護のしおり』が改善されるなど若干の前進はありますが、まだ緒についたばかりです。
 申告不要としたアルバイト収入を不正受給として、78条返還決定される事例すら発生しています。
 弦弓さんは「世話人会一同は、新たな運動で展望を切り拓いていく」と結びました。

小田原の教訓全国へ

 17年1月に小田原市で発覚した「ジャンパー事件」では、市長の姿勢や決断、組織的な対応が改善への力になったと報告。多くの団体から抗議が寄せられる中、市長が謝罪し、「生活保護行政についての検証と改善策をまとめる検討会を立ち上げ、同年3月までにまとめる」として進められました。市の職員は「生活保護『受給者』でなく『利用者』に変え、『しおり』の見直しもできた」など詳しく報告。そして、「生活保護利用者に寄り添えないことから起こったジャンパー事件は、どこでも起こり得る。呼ばれれば各地へ出かけて小田原市の教訓を伝えていきたい」と結びました。
 地元の大学生や、生健会の会員でもある相澤與一福島大学名誉教授も参加し発言しました。

(2019年11月17日号「守る新聞」)

 
   
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