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東京・足立区が誤りを認め謝罪

生活保護廃止判断、一転して取り消し

 東京都足立区が十分な調査をせずに30代男性Aさんの生活保護を打ち切っていた問題で、区は11月9日、誤った判断によるものだったとして保護廃止処分を取り消し、Aさんに謝罪しました。長谷川勝美副区長らが区役所でAさんと面会し、「不十分な調査をもって『失踪』と早計に判断し、安心して生活できる環境を損なわせてしまったことについて深くお詫び申し上げます」という近藤弥生区長のコメントを代読し、区の対応に非があったことを認めました。(赤木佳子)

コロナ禍で家を失い支援受け生活保護に

 アフリカ出身で日本国籍のAさんは、コロナ禍で仕事を失い、今年5月ごろから路上生活をしていました。
 8月から現在の職場の物流センターで働き始め、野宿状態にあることを知った上司が困窮者支援37団体でつくる「新型コロナ災害緊急アクション」に連絡、支援につながりました。
 緊急アクションの支援で足立区に生活保護を申請しビジネスホテルに宿泊、10月8日木曜日に保護決定しました。

土日含むわずか4日「連絡取れず」で廃止

 Aさんは携帯電話が使えない状態だったため、区の担当者は、8日と9日に生活保護の開始決定を伝える電話を一時宿泊先のホテルにしたとのこと。不在だったため、担当者はホテル職員にAさんあての「電話してください」とのメモを託し、週明けの12日にも電話をしたがつながらず、連絡もなかったため生活保護の廃止を決定したといいます。Aさんは同日夕方ホテルから追い出されました。
 この間、Aさんはホテルに宿泊しながら、毎朝、唯一の荷物であるリュックサックを持って仕事に出ており、メモも受け取っていましたが、ホテルの電話機からの外線の発信方法が分からず連絡できませんでした。

抗議と要請受け区が非を認める

 これに対し、生活保護申請にも同行した小椋修平区議(立憲民主党)がAさんは失踪していないとして廃止処分取り消しを求めましたが、取り消しはされませんでした。
 21日には、Aさん本人、勤務先の上司と支援者らが、福祉事務所長、担当課長、相談係長などと面会し、改めて失踪していない事実を伝えました。しかし福祉事務所長は「適正な手続きにより廃止したもので取り消さない」という頑迷な姿勢に終始しました。
 さらに27日、足立生活と健康を守る会と緊急アクションは、足立区長に対し抗議と要請を行いました(本紙11月15日付で既報)。
 区はこの抗議を受け、弁護士の意見も聞いて検討、失踪と判断するには調査が不十分で廃止処分は誤りだったと結論づけました。

人権意識・制度の理解に課題あり

 長谷川副区長は、区の今後の対応について「なぜ判断ミスが起きてしまったのか、深掘りして調査したい。人権意識、保護制度の法的な理解に課題があると考える。研修を強化し、福祉職をできるだけ配置し専門性のある職員を育てるなど、適切な生活保護を運用できるよう取り組んでいく」と述べました。
 面会に同席した緊急アクションの瀬戸大作事務局長は、「相談者に対し、他の地域で二重申請をしているのではないかという疑いを持って相談に当たっているのではないか。本人の実情を丁寧に聞く対応をしてほしい」と求めました。
 生活保護は最後のセーフティーネットであり、その廃止判断は人の生死にも関わります。Aさんの場合は支援者がいたため、今回のような経緯で処分は取り消しとなりましたが、この事件は氷山の一角で、普段からこのような運用が行われていたのではないかという疑念が拭えません。
 足立区発行の「受給者用生活保護のしおり」を見ると、まず表紙から「不正受給の増加」や「医療機関への不適切な受診」「自立促進の遅れ」などという言葉が書かれています。また、「権利」2行の下に「義務」がずらりと並び、「『不正受給』は法律で厳しく罰せられます」との内容に1ページも割いています。
 このように利用者を疑ってかかり、脅しつけるような行政の姿勢から、改めさせる必要がありそうです。

(2020年11月29日号「守る新聞」)

 
   
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