就学援助制度拡充に各地で奮闘
〜コロナ禍での生活支援を強化せよ〜
文部科学省は新型コロナの影響を受け減収になった人への対応を求めています。就学援助は憲法26条、教育基本法4条、そして学校教育法19条で「市町村は必要な援助を与えなければならない」と定めています。各地の生活と健康を守る会ではコロナ禍の中、就学援助制度拡充を求め奮闘しています。北海道と大阪からの報告です。
札幌市で改善
コロナで収入減も対象に 道生連
先日まで札幌市の就学援助制度については「失業や事業を廃止した場合は、前年所得をゼロとみなし審査を行うことができます」などの文言だけがホームページに掲載されていました。このことについて北海道生活と健康を守る会連合会(道生連)が札幌市教育委員会就学援助担当者へ確認したところ、「今年の収入が減少していれば、来年度は就学援助が利用できるため」との回答のみでした。
そこで、他市の対応について調べたところ、石狩市や旭川市、苫小牧(とまこまい)市などは「休業等での収入減で即座に認定する」としており、また児童生徒の保護者へ案内プリントを配布し周知を図っていました。他の政令市である横浜市、川崎市、京都市なども同様の認定を行っており、札幌市は休業などでの家計急変については何も考えていないことが分かりました。
そのため、札幌北区生活と健康を守る会の吉田日出男事務局長と道生連の石橋妙美事務局次長は10月23日、札幌市教育委員会へ「休業などでの収入減世帯にも就学援助認定すること。また、新型コロナ関連の国保減免などの制度活用世帯にも適用させること」との要望書を提出しました。
提出にあたり石橋事務局次長は「学校教育法第19条では『経済的理由によって就学困難と認められる保護者に対し、市は必要な援助を与えなければならない』としている。失業や廃業に限定していたら、いま現在、困難を抱えている人たちはどうしたらいいのか考えてほしい」と訴え、2週間以内の回答を求めました。
回答期限の2週間を目前に、教育委員会担当者から「具体的に検討しているので回答期限を1週間延ばしてほしい」と連絡があり、11月12日、同担当者より「検討した結果、支給することになりました。学校から各家庭あてに案内プリントを配布し、12月の広報誌でもお知らせすることになりました」と回答がありました。すぐに市のホームページも更新され、「新型コロナウイルスの影響で休業等により家計が急変した世帯は特例審査の対象とする」との項目が追加されました。11月3週目には、市内の各学校で案内プリントが配られました。11月末時点で8件の申請と相当数の問い合わせが教育委員会に寄せられているとのことです。(石橋妙美通信員)
再申請認めず
教育委員会に審査請求 大阪 八尾
八尾生活と健康を守る会では国民健康保険や介護、後期高齢者保険料について6月の一般減免の申請に続いて、7月にコロナ減免の申請に取り組みました。国保では約20件が認定され、全額免除などが実現しました。持続化給付金では入会して1年に満たない会員が、つながりを生かして6人の会員を増やしました。
このような中で、就学援助の申請結果が通知されてきました。この中では4人が基準超過でしたが、2人は医療費の領収書を添付し認定となりました。
基準超過で不認定となったうちの1人は、コロナ禍の下で収入減少があり、もう1人は、コロナの影響で売り上げも減少となっていました。生健会から「国(文部科学省)が出した『通知書』では、コロナの影響を受けている世帯では、それに伴う申請の受け付けも可能としている」ことを指摘するとともに、八尾市教育委員会に不認定に対する審査請求書を提出しました。
これに対し教育委員会は、「書類は受け付けるが、通常の申請期間を1か月延長して対応してきたので、コロナ禍での再申請の対応は考えていない」と回答し、認めませんでした。府下の他の市町村では、通知文を出して市民に知らせた自治体もありましたが、八尾市は違いました。
八尾市は、昨年4月の市長選挙で大阪維新の会の市長に代わりました。子どもの貧困や教育費の支出が大変になってきている今日、就学援助制度の拡充へさらに運動を強めていきたいと思います。(吉川均通信員)
(2020年12月20日号「守る新聞」) |