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理由記載のない決定通知は違法

知事が生活保護で取り消しの裁決

滋賀守山

 生活保護基準の引き下げに対し、全国で審査請求が行われています。滋賀県守山市の女性に2019年の審査請求に対し処分取り消しの裁決書が届きました。内容は計算に誤りがあること、基準改定の理由付記としては不十分というものです。

女性の請求実る

 2020年12月4日の午前、午後に予定していた滋賀県生活と健康を守る会連合会の20年の生活保護費削減に対する集団審査請求の最終チェックをしている最中、守山市で19年の審査請求をした女性に対し三日月大造滋賀県知事から裁決書が届きました。
 主文に「本件審査請求に係る処分を取り消す」とあり一瞬目を疑うほどでした。
 処分が取り消されたのは、守山市のWさん(6人家族)で、19年10月の改定に対し、12月6日に集団審査請求をしていました。

違法性を認める内容

 知事の裁決書は、実体法上の違法性について次のように記しています。
 (1)18(平成30)年9月4日付の厚生労働省告示317号で生活保護基準の一部改正が行われ、保護基準は適正に計算されていて違法性は認められない。
 (2)児童養育加算、母子加算についても基準に合致していて違法性は認められない。
 (3)生業扶助基準、高等学校等就学費や学級費などにおいて、保護の基準の適用を遺漏し、厚労大臣が定めた基準の違反が認められるため、取り消されるべきである(注)。
 行政手続法上の違法性について、最高裁の平成23年6月7日第三小法廷判決との関わりで、生活保護に係る処分基準は複雑になっている(1)基準は公表しているが、処分通知書に処分基準の適用関係が示されていなければ、審査請求人は、どの要素の変更によって生活費が変動したのか判断し難いし、扶助額の変動の具体的な要因が分かる記述もない。
 行政手続法は、処分の理由を名あて人に知らせて不服の申し立てに便宜を与える趣旨がある。「基準改定による」のみの記載は、行政手続法第14条第1項の要求する理由付記としては十分ではなく、本件処分は違法なものとして取り消されるべきである。
 また、事務次官通知第8の3(4)で新規就労控除の額や未成年者控除が改定されているが、改定前の控除額を記載していて、控除額の理由付記は行政手続法第14条第1項の要求する理由付記に誤りがあるため、違法なものとして取り消されるべきである。
 (注:高等学校等就学費の基本月額が5200円→5300円。学級費等の額が1750円→1780円に増額されていませんでした)

文書添付の改善

 本件審査請求の主訴は、生活扶助基準の引き下げも問題にしていましたが、その点については扶助額の計算は適正に行われていて違法性はない。憲法25条については、違憲審査権はないとしています。
 理由付記については行政手続法、最高裁判決を引用した当然の判断ですが、踏み込んだ判断になりました。
 生業扶助基準の次官通知に関しては、保護決定(変更)通知書や保護決定調書、保護基準額計算根拠だけでは、保護利用者が知り得ないという問題でした。それだけに保護基準の改定などについて、福祉事務所は生活保護利用者に十分な説明をする必要があります。
 滋賀県は、県下13市の福祉事務所、6町の生活保護事務を行う県事務所に、20年10月の基準改定による保護決定(変更)通知書に、保護決定調書と保護基準額計算根拠書を添付するよう指示しました。まだ不十分ながら保護費の支給明細が若干分かる資料になりました。
 その後、守山市では審査請求者とは別に3世帯の計算間違いが発覚、合わせて4件で5200円の支給漏れが確認され、追加支給が行われました。
 20年11月に、18年の審査請求に対して行政不服審査会が「生活保護変更処分について取り消しを求める審査請求は、容認すべきである」との答申が提出されていました。
 (八木 修さん)

(2021年1月10日号「守る新聞」)

 
   
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