「尾行されて怖い」と市民から訴え
志木市生健会埼玉県生連
生活保護に警察OBは無縁と抗議
埼玉県志木市で、生活保護を利用している母子世帯の母親から「黒い車に乗った2人の男性に尾行されて怖い」と市議会議員に相談がありました。尾行していたのは市の生活援護課に配属されている警察OBでした。尾行をやめるよう市議会で求めましたが、「事実関係が明らかになるまで調査は継続したい」と答弁。志木市生活と健康を守る会と埼玉県生活と健康を守る会連合会は改善を求め行動に移しました。
相談を受けた水谷利美市議は2月28日、市議会の総括質疑で取り上げ、「子どもが離婚した親のところに行ってはいけないのか。初めから犯罪行為との前提で警察OBが公然と付け回す。とても怖い話だ。福祉の場に警察OBを置くこと自体が間違いだ。直ちにやめるように」と繰り返し要求しました。しかし、市の福祉部長は「住民からの通報や、不正受給の疑いがあった場合は、しっかりと調査をしている」と、「調査」は正当と繰り返し答弁しました。
水谷議員の連絡を受けて、志木市生健会(大沢一男会長)は、埼玉県生連(笹井敏子会長)と相談して、市長と議会答弁をした福祉部長に抗議し面会を求めましたが、市は課長対応、人数制限、時間制限を条件に、4月19日、1時間の懇談をしました。
人権侵害は止めよ
個別事例と回答拒否
懇談には生健会から12人、市からは生活援護課長、査察指導員、ケースワーカーの3人が対応。志木市生健会と埼玉県生連会長の連名で、「子どもだけを呼び出して調査したことに謝罪を」「警察OBの配置をやめよ」など6項目の要求書を提出しました。査察指導員は「子どもを呼び出して調査したことも、個別事例には答えられないが、これまでもやっている」と公言。その一方で課長は、尾行を否定しました。
生健会は「部長が認めた事実を否定するのか」と追及。「それなら誰が尾行を命じたのか。人権侵害、犯罪者扱い、恐怖を与えて生活保護を辞退させる行為は許せない」との話の中で、生活保護手帳の冒頭に掲げられている「生活保護利用者のよき相談相手になる」ことなど「生活保護実施の態度」に沿った行政を要求しました。
「不正」の一点張り
反省の意思示さず
さらに参加者は「警察OBは福祉と無縁だ、犯罪調査のための調査ではないはずだ」「調査は担当者を含むケース会議で協議の上、行うはず」など追及。ケース会議の記録の公開を求めると、課長は「ケース会議に警察OBも参加し、その方針で動いている」と驚きの答弁。
「やはり課長が命じているのではないか」と抗議の声が上がりました。
笹井敏子会長は、必要な調査は否定しないが、今後、尾行調査をしないと明言するように繰り返し求めましたが、市側は「必要な調査は行う」とし、さらに「不正受給を許さないために警察OBを配置した」と回答するなど、一切、反省の意思を示しませんでした。
人権侵害を許さず生活保護行政改善のために埼玉県生連は引き続き奮闘していきます。(綾 好文通信員)
生活保護法の趣旨に反する
吉永 純 花園大学教授
生活保護は権利であり、仮に調査する場合であってもプライバシーに最大限配慮した方法で行う必要があります。
生活保護法28条に定める立入調査を行う場合には、法は「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」(同条4項)とわざわざ釘を刺しています。
収入調査は毎年6月に課税調査で把握することはできます。また、離婚しても親子が会うのはそれぞれの権利でもあり、親子関係の維持のために必要なことです。
さらに、引きこもりの子どもさんに親の行動を問うようなことが行われているとすれば、家族のプライバシーに第三者が介入することになり、場合によっては家族に亀裂を生じさせかねず、避けるべきことです。
(2021年5月30日号「守る新聞」) |