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「健康で文化的な生活」とは何か

家計に左右されず誰もが享受できる社会を

 全国生活と健康を守る会連合会(全生連)、全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)と研究者とが協力して取り組んできた「健康で文化的な生活とは何か」全国調査。憲法25条にうたわれている「健康で文化的な最低限度の生活」とは何かとの問いに正面から取り組んだ、この全国調査の報告記者会見が6月23日、参議院議員会館で行われました。(赤木佳子)

 調査はその設計に1年をかけ、丁寧に議論を重ねて設問が作られました。
 まず第1次調査で全生連の会員と全日本民医連の共同組織会員から抽出した、それぞれ5000世帯以上、合わせて1万412世帯に対してアンケートを配布し、全生連3416件、全日本民医連926件の合計4342世帯から有効な回答を得ました。その後、第2次調査として、アンケート回答者29人を直接訪問して生活実態や意識などの聞き取りを行い、そのうち16人には日記の記述にも協力してもらいました。

「文化的」という要素への視点

 調査報告を行った明治学院大学の河合克義名誉教授は、「憲法25条で『健康で』『文化的な』『最低限度の』生活を営む権利が保障されている。この3つの要素のうち、健康と最低限度については、実態は別にして、それなりに政策もあり議論もされているが、『文化的な』という要素については議論がされていない。文化政策という分野はあるが、生活に絡めて文化的という視点の議論がない。低所得層だけでなく一般層を含めての『文化的な生活をどう考えるか』の視点が日本では弱い」と語り、改めて文化的に生きる権利を問う必要があるのではないかという問題意識を提示しました。
 また、「そもそも25条の規定は『すべて国民は』の文言が示す通り、国民一般の生活の権利を含めたものであり、低所得層だけの条文ではない。理論的にも生活の安定とか安心、予防ということを考えたときにミニマム(最低限)を定めるということは、その上につながる一般層の生活の安定にもつながる」として25条の中身を現代的に問うことの必要性を重ねて説きました。

つくられた分断

乗り越えるために

 全生連の吉田松雄会長代行は、「最低限度の生活の一つの目安となっている生活保護基準について、名古屋地裁で『国民感情』を考慮することができるというとんでもない判決が出て、非常に驚き憤りを感じた。2012年、芸能人の母親が生活保護を利用していたことをもって生活保護への攻撃が強まり、保護利用者とそうでない人との分断・対立がつくられてきた。月6万5000円の国民年金受給者が、生活保護利用者に『恵まれている』と言葉を投げかける、そういう時代が政治によってつくられた。その中で今回の調査結果は、私たちの中でも健康で文化的な生活とは何かについて、みんなで話し合っていく大きな力になると思う。この調査は、現在の基準では『健康で文化的な生活を営む』ことができないことを明らかにしている。裁判の中でも調査結果を証拠として大いに活用してほしい。この調査を基に私たちも組織の中でチラシなどを使って大いに話し合っていきたい。行政の福祉部門担当者にも渡して共通認識にしていきたい」と述べました。
 全日本民医連の山本淑子事務局次長が、「この調査結果を、健康に暮らし安心して地域に住み続けるという憲法に保障された権利について考えるきっかけに活用していただければと思う」と結びました。

家計次第でない文化活動保障を

 会場からの質問に答えて河合氏は、「多様な文化活動を、社会的な援助を引き出して展開することが求められている」とし、「フランスでは交通や文化施設の料金を安くするなどして文化的な活動を保障している。家計に左右されるのでなく、全ての人が社会的に文化活動できる条件をどう提供するかを考えなくてはならない。もっと国民的に訴えていく必要がある」と述べました。

(2021年7月11日号「守る新聞」)

 
   
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