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新型コロナ感染症が急拡大

オリ・パラは矛盾したメッセージに

東京都北区保健所・所長 前田秀雄さんに聞く

 全国の新型コロナウイルスの感染者は8月10日、1万78人で8日連続1万人を超えました。東京では8月5日に初めて5000人を超え、10日までの直近7日間の平均は3978・7人で前週と比べ119・2%。死者や重症者も増え、「第3波」のピークを上回り過去最高、深刻な状況です。マスコミにも登場する東京都の北区保健所所長で、厚生労働省の専門家組織「アドバイザーリポート」のメンバーである前田秀雄さんに話を聞きました。(前田美津恵)

感染者1・5倍急増

経過観察300人に

 コロナ感染者の状況は前週から1・5倍前後に増え、これが連続すると保健所のキャパシティー(容量)を超えてしまいます。高齢者の重症化は少なくなり、20〜30代の人は軽症の人が多いのですが、40〜50代の一部で重症化しているため、保健所は重症化する可能性がある人に必死に対応しています。
 北区は中等症病床は比較的多くあるので概ね対応できてきましたが、重症患者に対応できる病院がないので、東京都の調整窓口に依頼しています。重症患者が増えて調整を依頼してもすぐには受け入れ病院が見つからない状況になっています。
 健康上リスクを抱え息苦しさを抱えているが、酸素濃度は入院の基準でないという人もいるので、中等症に近い方々に、いかにきめ細かく健康観察ができるかが課題です。
 健康観察の必要な人が7月19日の週は100人、その後200人、8月2日の週は300人で、1週間ごとに倍近く増えています。都でも感染者数が前週より1・7倍に増えて、連休の影響もあると思いますが、まだまだ増える傾向だと思います。入院しない人以外は自宅療養ですから、当然、陽性者が増えれば、自宅療養が増えるわけです。
 自宅療養は全員、健康観察が必要で保健所の業務となります。その中で、在宅で24時間は監視できない状況が増えていくことは確かなので、突然重症化した時に迅速に連絡が付かないと、非常に厳しい状況になることはあり得ると思います。

対策は陽性者の減

コロナに関心持つ環境を

 コロナ対策は基本的には陽性者を減らすことが一番です。ただ、陽性者を減らす手段としては感染の機会を減らすしかなく、日本は法的に強制する社会でない以上、市民の方たちに理解して行動してもらうしかなく、そうしたことを期待します。
 国には、そういう風に人々があまり外へ出歩くと感染リスクが高まるんだなという意識を持っていただけるような社会体制をとってほしいです。
 オリンピック開催は華やいだ雰囲気、夏休みや連休、お盆というもともとの祝祭的な気分と重なって、市民の方々の行動が少し緩んでしまったんだろうなというところはあります。新型コロナウイルス感染症対策分科会が出した「提言」の中でも、矛盾したメッセージというものが一番危険だと指摘しています。もっと前から考えていれば、オリンピックの中止ということもあり得たと思います。
 パラリンピックですが、今のままでいくと開催時に感染が収まっていない可能性が高い。今以上の比べものにならないくらいの感染状況になっていると想定されます。パラリンピック開催は、さらに矛盾したメッセージを出していくことになるのではないかと懸念します。
 感染拡大を防ぐということは国民全体の課題といえます。

ワクチンの問題

 ワクチンは、高齢者が8割くらい打ち終え、一定度行き渡ったことにより、この「第5波」を高齢者に波及させなかったので、その意味では成果だったと思います。
 4月当初からのワクチン接種が1か月程度ずれ込んだにもかかわらず、当初の計画通り7月までに接種を終えようと急いだために、予定されていた配給ペースと合わなくなり、混乱をきたしました。

(2021年8月22日号「守る新聞」)

 
   
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