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扶養は義務? 扶養照会の実態

プライバシー侵害の扶養届書改善へ全国的運動を

福岡小倉

 生活に困窮していても生活保護の利用をためらう要因の一つに申請の際の扶養照会があります。親族に生活保護の利用を知られたくない、家族関係がうまくいっていないので連絡を絶っているなどの理由で、扶養照会をされるなら申請をしないという人が多くいます。全国生活と健康を守る会連合会でも国に扶養照会をやめるように求めています。扶養照会の扶養届書についても、プライバシーを侵害し、親族から申請者への反感を生み出すことにもなりかねない実態があります。福岡県北九州市での取り組みを紹介します。

 小倉生活と健康を守る会は、北九州市の保護課が「扶養義務者」に対して扶養照会を依頼するとき、どんな文書で実施しているのかを知りたいと、市の情報公開条例を利用し、市の「扶養援助のお願い」と、親族が回答する「扶養届書」を入手しました。

驚きの内容

市議会に改善陳情

 その内容のひどさに大変驚きました。
 入手した「扶養援助のお願い」では、“扶養は義務”であり、親族による扶養が生活保護を利用するための前提であるかのような誤解を与える文言になっていました。
 「扶養届書」では、「家族構成及(およ)び収入等の状況」として、扶養義務者の家族も含めて、氏名、続柄、生年月日、職業、勤務先、平均月収額の記載を求めていました。また「資産の状況」では、家屋や宅地、田畑や山林の平米数、「負債の状況」では、負債の内容、返済年月と金額、返済の終了予定年月まで求めていました。
 さらに、「収入等の状況及び負債の状況」については、源泉徴収票、給与明細書、ローン返済予定表の写しなど、その状況が明らかになる書類を添付してくださいと書かれていました。
 しかも、これらの項目を報告する“義務”があるかのような文言になっていました。
 これはプライバシーの侵害であり、生活保護申請者への親族の反感や憎悪をも生み出すことになりかねず、家族、親族の信頼関係を悪化させることも危惧(きぐ)されます。そして、何よりも生活保護利用への壁を一層高くしてしまいます。
 しかも、この文書は国がモデルを示していて、全国でほぼ同じ書式が使われています。そこで、私たちは北九州市議会に対して、文書の見直しを求める陳情を行いました。
 市議会での陳情審査では、11人の委員のうち、自民党、日本共産党、維新の会の5人の委員からの発言がありました。
 市も(扶養届書などを)「かたくなに変えないということではない」「可能な限り誤解を与えないような表現に改めるように協議検討していきたい」と答弁しました。
 委員会審議を通じて議員の中で、ひどい実態への問題意識が共有され、国のモデルに従った文言が“ひどい”ことを北九州市が認めたことは重要だと思います。
 陳情審査については、毎日新聞の北九州版に大きく取り上げられ、その記事が「SmartNews」 や「yahoo!ニュース」「gooニュース」などで広く紹介されました。

扶養照会廃止を

運動で廃止・改善へ

 その後、福岡県の書式は北九州市に比べて非常に平易な文言になっていることが分かりました。県の書式はまず、「援助するかしないか」を記入し、それぞれ「できない理由」「具体的な支援内容」を簡単に書くだけです。県議会の委員会では、生健会の会員でもある県議が、書式の中に「扶養が優先」と記載されていることは誤解を招くと見直しを求め、県も検討を約束しました。
 小倉生健会は、書式見直しを検討中の北九州市に対して「県の書式を市の見直しの参考にすべき」と提案しました。市の保護課も「参考にします」と回答しました。
 生活保護法の29条(資料の提供等)では、扶養義務者に「氏名及び住所又は居所、資産及び収入の状況その他政令で定める事項」の報告を求めることができるとなっています。
 “扶養照会”自体をやめさせる取り組みと合わせて、生活保護法29条の見直しや法を拡大解釈してプライバシーを侵害するような調査をさせない運動、また、「扶養援助の照会」と、「扶養届書」の大幅な改善を求める全国的な運動が必要だと思っています。
 (八記博春通信員)

(2021年11月7日号「守る新聞」)

 
   
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