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違法業務に携わらせ、

生存権侵害の危機

生活保護の「外部委託問題」で区と懇談

東京 中野

 本紙の今年1月31日号6面で掲載した東京都中野区の生活保護の外部委託問題ついて、中野生活と健康を守る会、東京都生活と健康を守る会連合会(都生連)、全国生活と健康を守る会連合会(全生連)は11月17日、中野区と懇談を行いました。懇談では外部委託の現状や実態、問題点が改めて浮き彫りとなりました。(齊藤 豊)

 懇談には、中野守る会から4人、都生連から3人、全生連から5人の13人が参加。区からは健康福祉部生活援護課課長ら4人が参加しました。
 守る会からの要望と質問は、(1)区が行っている生活保護業務の外部委託の経過と目的、根拠となる関係法令は何か、(2)その実施体制と内容、(3)現時点での課題と問題点、(4)利用者から出されている意見、問題など、(5)外部委託されている高齢者事業で正規職員のケースワーカー(CW)が5人で1650世帯を担当しているが、CWは保護利用者に年2回の定期家庭訪問が必要なのに2019年度は129件、20年度は103件しか訪問していない状況をどう考えているか、(6)生活保護法第19条(実施機関の責任)に違反しているのではないか、などです。
 区は、(1)には、05年に厚生労働省が通知した「自立支援プログラム」に基づき行っており、65歳以上で生活が比較的安定した被保護者を対象に日常的な自立の支援が目的、(2)には、NPO法人に委託し体制は13人、内容は(1)の対象世帯に年2回の訪問、各種福祉サービスの適正な受給の確認などを通じ日常的な自立を促すことなど、(3)には、人員不足でCWが直接訪問できていない世帯が多数あることが課題で、そのため区は正規CWを10年間に20人増やす方針を明らかにしており現場も増員を切望している、(4)には、特にないと認識している、(5)には、保護実施要領で「年1回でもよい」とされており、委託事業者が年1回は定期訪問を行っている、(6)には、前述の05年の厚労省通知に基づき行っており違反には当たらない、「保護の決定、実施」は区が一元的に行っており委託できない事業で外部委託はしていない、と回答しました。

保護決定の起案に
委託事業者が関与

 その後の質疑応答で、守る会から、以前、区内の保護利用者Aさんがすでに支払われていた家賃の更新料を外部委託事業者の「専門員」に返還を求められたことがあり、後に区がその対応の誤りを謝罪したことについて言及。それは区職員のCWが1人で判断したのか、その保護変更処分(返還請求)をする際にCWからAさん本人に話をしたのかと問いました。それに対し区は、返還を求めたのはCWだが、Aさんと話はしていないと回答。
 守る会から、保護変更処分の起案は誰がするのか、「専門員」ではないのか、それは違法行為ではないのかと質問。区は「『専門員』がデータ入力をしているが、起案はCWが行っている」と回答。
 それに対し守る会は「おかしい。議会では『起案は専門員だが決裁は職員。だから違法には当たらない』と答弁している。CWはこのことを本人に確認して起案したのか。専門員の話を聞いてやっただけではないのか」「CWは本人のことを直接見ても聞いてもいないのだから『専門員』が実態を見ているわけだ。区の職員は『専門員』から文書などで上げてもらうなりしなければ判断ができないだろう」「これは不利益処分に当たり、行政手続法上、それを行う前には本人に弁明の機会を与えなければいけないのにそれを怠ったのは法律違反だ」と追及しました。
 区は「『専門員』にデータ入力させているだけ」と不可解な回答を繰り返すだけで、CWの確認不足を認め謝罪。「違反」の指摘に「本来はその通り」と認めざるを得ませんでした。

CWの訪問は年1回未満
利用者の実態見ていない

 また、守る会は、(5)の「CWの訪問は年1回でもよい」との区の回答に対し、保護実施要領では、少なくとも年2回の訪問が必要とされているはずだと質問。区は「原則はその通りだが、今は別のプログラムで訪問の機会が得られるのであれば年1回の訪問でよいとされている」と回答。守る会は「ではそれを入れてどうなのか」と問い、区は「『専門員』は昨年で1589世帯に2254回、一昨年で1590世帯に3957回」と回答。
 守る会はさらに「正規CWの訪問は200回以下、1世帯に年1回にも遠く及ばない。これは大きな問題だ」と指摘。区は「指摘の通りでありCWの訪問はかなり少ない。要は人が足りない…」と回答。守る会は「保護変更処分などが必要な人は直接会い、見て、変更をかけ生存権を守るはずだ。それがないのなら生活保護の実施機関としては致命的な欠陥だ」「『専門員』が実施要領などを熟知しているわけがない。正規CWが絶対的に必要だ。こういう状況では今後もAさんのような事例が頻出する」と厳しく指摘。区は「指摘の通りで、現場は危機感を持っているが、本当に人が足らないのが全て。区の人員増の方針に期待している。温かく見守ってほしい」などと述べ、現状を追認し違法状態を維持する回答に終始しました。

(2021年12月5日号「守る新聞」)

 
   
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