神奈川生存権裁判
やった! 勝訴判決4例目
保護費引き下げは生活保護法違反
2015年に46人が原告として立ち上がった神奈川生存権裁判の横浜地裁判決が10月19日、第一民事部・岡田伸太裁判長から言い渡されました。「生活保護基準引き下げ処分を取り消せ」という原告らの請求を認容する勝利判決を得ることができました。神奈川生存権裁判を支援する会事務局次長の峯松益幹さんからの報告です。
全国29地域で提起された「いのちのとりで裁判」(生活保護基準引き下げ違憲訴訟)では、大阪、熊本、東京に続く4件目の原告勝訴となりました。
「公正な判決を求める請願署名」をはじめ全国からのご支援に感謝します。
判決当日の朝は、原告、弁護団はじめ120人もの人が集まり、地裁前集会、そして原告が持つ横断幕を先頭に「入廷行動」が意気高く繰り広げられました。
地裁担当のマスコミに対する「記者レクチャー」や取材要請のかいもあり、NHKはじめ多くのマスコミが注目する中、法廷内では判決主文が読み上げられました。
笑顔、握手、歓声、涙
驚きと喜びが交差
主文をすぐには理解できず、正直、「負けたか」と重苦しい雰囲気が漂いました。地裁正門では、テレビカメラはじめ大勢がカメラやスマホを持って、今か今かとその瞬間を待ち受けます。
11時40分、男女の若い弁護士が、緊張の面持ちでそれぞれに白い紙を持って駆けて来ました。丸めた束が広げられた瞬間、「えっ!」間髪入れず「勝ったー」「やった!」と悲鳴に似た叫びが広がるや、両手で拳を挙げる人、拍手する人、懸命に写真に収める人。
「信じられない。でも勝ったんだ」、ゆっくりと歓喜の波が沸き起こっていきます。
やがて、入廷していた支援者が姿を現しましたが、多くが勝ったか負けたかよく分からない表情だったのが印象的でした。
外で待ち構えるみなさんの笑顔、拍手、歓声のすごさに驚きを隠しきれない様子。
続いて、原告、弁護団が出てくると、雰囲気は一気に最高潮に達しました。
「頑張ったね」「良かったね」「おめでとう」と握手、ハグ、笑顔、涙の光景にマスコミのカメラとマイクが乱舞します。
波止場会館に場所を移して開いた「報告集会」には、100人を超える人が集まり、弁護団からの説明と原告各人からの発言で、会場は感動に包まれました。
井上啓(はじめ)弁護団長は「素直な判決文だった。原告の証人尋問で話した生活実態を事実認定された」と。加賀敏司(さとし)原告団代表は「全国のみなさん、ありがとうございました。裁判では医者から野菜をとるように言われているが、今の保護費ではできない実態を訴えた」と話しました。
神奈川では最低賃金裁判、年金裁判、生活保護裁判の「25条共闘」があり、その各団体からも発言、支援の大きな力になりました。
格差拡大や物価高
保護基準引き上げを
判決では、いわゆる「ゆがみ調整」については、厚生労働大臣の裁量権の逸脱・乱用はないとしましたが、「デフレ調整」について、専門的知見に基づく適切な分析および検証を行うことが必要であり、これを経ずになされた厚労大臣の判断過程および手続に瑕疵(かし)があると判断されました。生活保護法8条違反です。
生活保護基準は「ナショナルミニマム」(国民生活の最低保障)として生活全般に極めて重大な影響を及ぼします。格差と貧困が拡大・固定化する中で、新型コロナウイルス感染症の拡大、今日の物価高による影響は、現在の社会保障制度の脆弱(ぜいじゃく)さを浮き彫りにし、生活保護の重要性を明らかにした判決となりました。
国は、本判決の意義を重く受け止め、控訴せずに本判決を確定することを求めます。加えて、違法に保護費を下げられた生活保護利用者に対して真摯(しんし)に謝罪し、健康で文化的な生活を保障するため、2013年引き下げ前の生活保護基準に戻すことを強く求めるものです。
(2022年10月30日号「守る新聞」)