JR九州は公共交通の責任果たせ
駅の「無人化」 車いす利用者などに大打撃
北九州小倉
北九州・小倉生活と健康を守る会理事の服部拓己さんは四肢体幹機能障害や呼吸機能障害などを持つ重度障害者で、車いすを使い生活しています。服部さんが先日、移動のためJR日豊線を利用しようとしたところ、誰も駅員がいない状況で困ったとのことです。その時のこと、また、同様の事情でJR九州に対し起こされている大分県での裁判などについて、服部さんからの寄稿文を紹介します。
1時間以上待たされる
ますます利用しづらく
3月18日の16時過ぎ、私(服部さん)がいつものように北九州市小倉南区にあるJR城野駅を利用してびっくりしました。窓口は、15時以降は全面シャッターが下ろされ、駅員が誰もいないのです。電動車いすを使っている私は、スロープを渡してもらわなければ列車に乗れません。前の週に利用したときもそうしていたのです。
そこで、備え付けのインターホンを押すとコールセンターにつながり、「下曽根駅から係員が向かいますので、しばらくお待ちください」とのこと。「何時の列車に乗れますか」と尋ねても、「状況によるので分かりません」という返事だけでした。
結局、駅で1時間以上待って、17時20分台の列車に乗りました。下曽根から来た介助員は、なんと、南小倉駅から吉富駅までの区間(46キロメートル・普通列車で56分)を1人で担当しているようです。
その日もすぐに、朽網(くさみ)駅と小波瀬(おばせ)西工大前駅それぞれに介助に行くと言っていました。介助員に今後事前に予約ができるかと尋ねましたが、「その日その日で状況が変わるので、お約束できません。当日早めにご連絡ください」とのことでした。
JR九州は、経営の「合理化」で、各路線で人員減らし・駅の無人化を進めています。私たち車いす利用者にとっては、ますます利用しづらくなるばかりです。
さらに、安全面でも不安が広がります。JR九州は駅の「無人化」を見直し、公共交通機関としての責任を果たすべきです。
大分県での裁判を傍聴
障害者に「平等」なのか
この城野駅の突然の「無人化」を受け、私は9月29日、「駅の無人化」を進めるJR九州に対してスロープ介助の必要な車いす利用者が大分県で起こした裁判の、第7回期日を傍聴してきました。
JR側は、乗客の減少による「赤字」を人員削減の理由にしています。しかし、JRグループ全体で見ると、操車場跡地や駅ビルなどの不動産事業、建設、旅行事業、飲食店経営などの多角経営で毎年大幅な黒字を上げています。
弁護団の徳田靖之弁護士は「JR九州は、コロナ禍の2021年度ですら140億円以上の株主配当を行い、3億7000万円の役員報酬を支払う予定です」と明らかにしました。そして、これまでもJR発足時の「経営安定化基金」や、路線の整備・高架化などに際して、国民の税金が大量に投入されています。その理由は、「誰もが自由に利用できる」公共交通機関を守るからであり、JRにはその社会的な責任があるのです。
また、JR九州は「連絡があれば係員が行くので問題ありません」という態度ですが、それでは障害者が希望通りに列車を利用することができません。急用や、体調、天候などの変化にも対応できません。
障害者差別解消法は、「他の者との平等」を基礎に「合理的な配慮の提供」を求めています。障害者だけ、予約しなければ使えないのは、果たして「平等」で「合理的」なのでしょうか。
(2022年12月4日号「守る新聞」)