流れはこちらに宮崎で5例目の勝訴
生活保護基準引き下げ違憲訴訟宮崎地裁判決
宮崎県での生活保護基準引き下げ違憲訴訟(いのちのとりで裁判)で2月10日、宮崎地裁は原告勝訴の判決を言い渡しました。この判決で原告の勝訴判決は5例目になります。宮崎県での裁判の闘いと2月13日に行われた控訴をしないようにとの厚生労働省要請と記者会見の様子を紹介します。
勝訴聞けぬ原告も
宮崎県生活と健康を守る会連合会会長 橋口 寛
宮崎地方裁判所(小島清二裁判長)は2月10日、宮崎市で4人の原告が訴えていた「2013年生活保護基準引き下げ決定の取り消し請求」訴訟で、原告の訴えを認める判決を出しました。
原告勝利の判決は、大阪、熊本、東京(はっさく訴訟)、横浜に次ぐ5件目となります。
判決内容は他の裁判と同様、厚生労働省が基準引き下げの根拠とした物価下落の計算方法の誤りを指摘し、審議会などの検証もされないことも問題としています。
当日は、午前中雨が強かったこともあり、傍聴の人数が心配されましたが、マスコミの関心も高く、傍聴席もほぼ満席での判決となりました。
宮崎の裁判は、原告4人全員が宮崎市生活と健康を守る会の会員で、年金裁判の支援者と合流して結成された「生存権を守る宮崎の会」が傍聴参加などの支援活動に取り組んできました。
昨年春に1人の原告が亡くなり、2年前には長く宮崎市守る会の中心になってきた林好美さんが亡くなり、1か月前に原告のパートナーが亡くなり、今回の判決を聞くことができませんでした。
判決の言い渡し後に、裁判長が判決を聞けずに亡くなった原告がいることに触れて発言したことが印象に残りました。
このことは地元のテレビニュースや新聞でも報じられていました。
原告と弁護団、支援者は引き続き、控訴させない取り組みを進めています。
判決を受け止め改善を
厚労省要請と記者会見
宮崎の勝訴判決を受け、2月13日に衆議院第一議員会館会議室で厚生労働省に控訴をしないよう求める要請行動と記者会見が行われ、弁護士や支援者ら13人が参加しました。
要請では「控訴するな」との訴えに厚労省の担当者は「判決を精査した上で関係各所と対応を検討したい」と回答するのみで控訴しないという回答は得られませんでした。回答に対し参加者は「判決を受け止めて、改善に踏み出してほしい。それが行政の責任だ」と訴えました。
記者会見では、宮崎から参加した後藤好成弁護士が要請の様子を伝え、「長い裁判の中で亡くなる人もいる。このまま続けても原告を救うことはできない。判決を読み上げた後に裁判長は私見として、『裁判が長引いたことで判決前に原告が亡くなってしまったことを遺(い)憾(かん)に思っている』という発言をした。厚労省は判決を真(しん)摯(し)に受け止め、再度控訴しないように考えてもらいたい」と訴えたと話しました。
宮崎県生連の橋口会長は「最低基準のはずの生活保護基準より苦しい生活をしている人を放置して、さらにその人たちと比べて生活保護は高いという厚労省の理屈はおかしいので、大きく世間に知らせていきたい」と話しました。
(2023年2月26日号「守る新聞」)