三重県鈴鹿市の生活保護人権侵害
自動車利用を求めた原告の支援を
三重県鈴鹿市は身体障害がある人や難病の人に、自動車の保有を認めて生活保護を支給しているにもかかわらず、運行記録を提出しないなどの理由で保護を停止しました。2組の生活保護利用者が裁判に訴え闘っています。鈴鹿生活と健康を守る会の下井信夫さんから報告と支援の訴えが届きました。
運転記録票を強要
通院以外自動車認めず
2つの裁判勝利をめざして1月7日、「鈴鹿市障がい者自動車保有・利用禁止事件の裁判を支える会」を設立しました。会場・オンラインを合わせて約90人が参加し、県外からの参加が多くこの裁判の重みを痛感しました。
Kさん親子
昨年10月提訴
身体に障害のあるKさん(80代)と難病のある次男(50代)は、生活保護を2019年10月から利用していました。通院に必要な自動車保有が認められました。しかし、市は、通院以外の買い物などへの自動車使用を禁止するため、自動車の運転記録票の提出を強要してきました。
Kさんがこれを拒否したところ、市は生活保護停止処分を決定しました(22年9月27日)。Kさん親子は22年10月6日に津地方裁判所に提訴しました。
運転記録票の提出を義務とすることはプライバシーや移動の自由に対する人権侵害に他なりません。
その後、さらに次男の通院先が市内の病院に変わったことに伴い、自動車の保有を認めない決定をし、自動車の処分に係る見積書の提出を指導・指示してきました(23年2月1日)。
そして、これに従わない場合、さらに生活保護の停止・廃止を行うとしています。
脊髄症の女性
昨年11月提訴
生活保護を利用中の女性、Aさん(70代)は、仕事や親の介護で脊髄(せきずい)症を発症し、身体障害者手帳1級が交付されています。つえ歩行で通院には自動車の利用が必要です。にもかかわらず、市は自動車の保有を認めようとせず、生活保護申請時に自動車の処分見積書を提出させました(処分価値はマイナス)。
その後3年間、自動車の保有・利用を認めてほしいとの訴えに何らの回答がないまま黙認してきましたが、昨年9月、突然に、さらに2社の処分見積書を提出するよう指導・指示をしてきました。そして、その指示に従わなかったからと、市は保護停止処分を決定しました(22年11月1日)。
そこで、11月9日に提訴しました。
2組3人の裁判の第1回口頭弁論が1月19日に行われ、マスコミも多数参加し報道されました。
鈴鹿市の異常明らか
力合わせ改善求める
生活保護法では、障害者が通院のために自動車を利用する場合、条件に合致すれば、その保有・利用が認められています。しかし、鈴鹿市はこの条件に合致する2件の原告に対して、「国の方針通り」と人権侵害行政を続けています。市に与えられた裁量権の逸脱、乱用は明らかです。
他市では、生活保護法通りに自動車の保有を認めています(※)。
今回の件は、鈴鹿市の生活保護行政での人権侵害の一部にすぎません。この裁判を通じて鈴鹿市が憲法25条に基づく「人権」を大切にする保護行政に立ち返るよう市民運動を展開しています。
研究者や全国各地の弁護士が関わり、三重県社会保障推進協議会も連絡先になっています。
※厚生労働省の21(令和3)年4月1日時点調査で、例えば三重県桑名市の自動車容認が11件、否認が3件に対し、鈴鹿市は容認0件、否認が7件になっています。
(2023年3月12日号「守る新聞」)