生活保護基準引き下げ違憲訴訟
奈良地裁で勝訴9例目6連勝で並ぶ
29地裁30か所で闘われている生活保護基準引き下げ違憲訴訟(いのちのとりで裁判)で、18番目となる地裁判決が4月11日、奈良地裁であり、「減額は違法」とする判決が言い渡され9勝目となりました。この間の6連勝で、18地裁のうち9地裁で勝訴し、勝敗では五分となりました。奈良県生活と健康を守る会連合会の飯尾大彦事務局長からの報告です。
引き下げ処分取り消す
増額変更申請は認めず
4月11日午後2時、奈良地裁101号法廷で寺本佳子裁判長から「いのちのとりで裁判奈良訴訟」の判決主文が読み上げられました。「大和郡山市福祉事務所長が平成25年7月26日付けでした大和郡山市在住の原告にかかわる保護変更決定を取り消す」との言葉に傍聴席の一同は喜びにあふれました。
次の「奈良市在住の原告の請求をいずれも棄却する」との言葉には「えっ」という戸惑いが広がりました。「一部勝訴、一部敗訴か」と思いましたが、続く判決理由の中で裁判長は「デフレ調整に関して物価統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠き、物価統計不正があり、違法である。保護変更処分を取り消すのが妥当」と明確に論じました。厚生労働大臣の裁量権の逸脱も指摘しました。
この点で、明らかに勝訴となりました。
同時に審理されてきた奈良市の原告の生活扶助費の増額変更申請却下決定については、違法な基準改定ではあるが一つの定められた基準に基づいて算定されたものは必ずしも違法とまでは言えない、というものでした。基準引き下げ自体が違法ならば、この請求も認められるべきです。
判決の重要性確認
会見で当事者訴え
70人の傍聴席はほぼ満杯で、県内各地から駆け付けた支援者の熱気であふれました。判決終了後、奈良弁護士会館まで移動し、会館前で「勝訴」と「不当判決」の両方の旗を掲げて今後も続く闘いに拳を振り上げました。
その後、報告集会と記者会見が行われましたが、急きょ開かれた弁護団会議でまとめられた声明が報告されると、参加者一同“基本の本体で勝訴した”という奈良地裁判決の重要性について確信を得ることができました。
原告の一人から「同居していた母が亡くなり住宅扶助額が下がってしまった。その差額を捻出する大変さは並大抵のものではなく、結局は転居せざるを得なかった」と保護基準の劣悪さについて報告がありました。
会見終了後、記者の一人から「当事者の淡々とした訴えを聞いて改めて保護基準の劣悪さが見えた」との感想も寄せられました。
60年前、奈良市内の病院に入院しながら朝日訴訟にかかわり、最高裁まで傍聴に行ったという人もこの間の傍聴に参加し、今日も参加していました。60年前からの取り組みが今にリレーされていることの重要性とありがたさ、あきらめないことの大切さをつくづくと感じる一日でした。
(2023年4月23日号「守る新聞」)