生活保護基準引き下げ違憲訴訟
大阪高裁で不当判決
生存権守る司法の役割を放棄
国が2013年から3年間にわたり生活保護基準を引き下げたことに対して、「生存権を保障した憲法25条に違反する。減額処分を取り消せ」と、大阪で38人が訴えていた生活保護基準引き下げ違憲訴訟で4月14日、全国で初めての控訴審判決が、大阪高等裁判所でありました。判決は大阪地方裁判所の勝訴を覆(くつがえ)す不当判決でした。判決日の様子と原告らの感想などを報告します。
原告の苦痛認めず
「引き下げアカン」の横断幕を先頭にした午後2時からの入廷行進には、多くのマスコミが取材に来ていました。
大阪高裁の山田明裁判長が言い渡した判決は、厚生労働大臣の広い裁量権を認めて、引き下げによる原告の不利益・苦痛は認めないという、極めて不当なものでした。
報告集会では、初めに木下秀雄共同代表が「期待していただけに大変くやしい。判決は、国側がしたことを全て『不合理とまでは言えない』とした。それなら、国は何をしてもよいということになる。引き下げで生活が一層苦しくなったことも、『リーマンショック』で国民も大変だったのだから、最低生活を割ったとまでは言えないと言い切った」と報告しました。
由良(ゆら)尚文弁護士は「判決で、引き下げは自民党が2012年の総選挙の公約として政治的判断で行ったものだが、不当な動機で行ったとは認められないとした」と報告。
小久保哲郎弁護士は、判決を受けての声明文を読み上げ、「判決要旨は、引き下げが違法となる場合を『確立した専門的知見との矛盾が認められる場合』と限定し、『引き下げによる苦痛は、国民が感じたものと同じ』と切り捨てた。これは少数者の人権を救済する司法の役割を放棄するものだ。健康で文化的な生活が保障されるまで、断固としてたたかい続ける決意だ」と話しました。
判決への感想や決意
原告の新垣敏夫さん(68)は「非常に怒りを感じ、悔しい思いだ。引き下げによる不利益を訴えてきたが全否定された。言葉もない」。
同じく小寺アイ子さん(78)は「この裁判に勝って、みんなが幸せになれることを願っていた。本当に悔しい。これからもたたかう」。
和田信也弁護士は「判決は『確立された専門的知見と矛盾しているかどうかだ』として、国の全ての主張に対して『一定の合理性がある』とした。初期の地裁判決に先祖返りした」。
全大阪生活と健康を守る会連合会の大口耕吉郎会長は「裁判長はこの間、何を聞いていたのか。怒りが収まらない。この冷酷な判決に対して、今後も一体となってたたかっていきたい」。
尾藤廣喜弁護士は「原告団、支援者、弁護団がやれることを全てやって判決を迎えた。全国に誇っていいと思う。厚労大臣の判断が全て『確立した専門的知見』であって、その欺瞞(ぎまん)性・違法性を私たちが明確に立証しなければいけないということは、法的な枠組みとして許されない。また『引き下げでの苦痛は、全国の人が感じた苦痛と同じだから我慢しろ』とは、憲法で保障された生存権を司法が担っているとはいえない。裁判長の考え方・貧困感は問題だ。この判決を認めるわけにはいかない」。
報告集会の最後に、勝利するまで頑張ろうと、「団結頑張ろう」を三唱しました。
(城山 猛さん)
(2023年4月30日号「守る新聞」)