実態に合わない“級地”引き上げを
生活保護問題で県と市に要望書を提出し懇談
福島 郡山市
生活保護にはさまざまな問題や課題があり、級地問題もその一つです。級地により生活扶助額が変わり、現在、1級地からの3級地まであり、それぞれ1、2と枝分かれしています。福島県の郡山市生活と健康を守る会(郡山市生健会)が3級地―1の改善を求めて取り組んでいます。郡山市生健会の朽木敏弘会長からの報告です。
郡山市生健会が活動範囲にしている郡山市は、福島県の中央部に位置し、県庁所在地の福島市より多い32万人の人口を有する「経済県都」です。1997年から中核市に移行し、東北地方では仙台市に次ぐ第二の都市です。そのような経済状況とは裏腹に、生活保護の級地は3級地―1のままです。
中核市で生活保護基準が3級地なのは、郡山市以外は同じ県内のいわき市、青森県八戸市の3市のみで、他の中核市は1級地か2級地です。また、住宅扶助については、いわき市は東日本大震災を機に3万5000円に引き上げられましたが、郡山市は3万円に据え置かれたままです。
中核市と生活保護基準は直接結びついてはいませんが、経済活動に比例し物価や地価は上がるので当然、生活費や家賃に跳ね返ってきます。郡山市も級地引き上げや住宅扶助増額の要請を再三にわたり国に要望しており、昨年度は市長が2回、厚生労働省に行き担当者に要請しています。
県に責任ないのか
級地30年強見直されず
こうした経過を踏まえ郡山市生健会は4月18日、福島県に対し、県としても国に級地引き上げを働きかけるよう要望書を提出し、懇談を行いました。懇談には郡山市生健会の役員・会員6人と福島県生活と健康を守る会連合会の弦弓高明事務局長などが参加しました。
県側は社会福祉課長と事務担当者が出席、当初は「国の検討を見守る」との消極的な回答だったため、「3級地の中核市3市のうち2市が福島県という状況をどう考えるのか。『平成の大合併』で市になった県内3市は町村の基準である3級地2のまま。実態に合っていない。県に責任はないのか」と追及しました。
課長は「4月に着任したばかりだが、調べたら三十数年、県内の級地の見直しが行われていないことに正直驚いている」と述べました。住宅扶助については、家賃が3万円のアパートの実態を発言した会員の声を踏まえ、「初めて聞く実態だ。国に伝えたい」と話しました。
ポスターの作成を
扶養照会、車保有も要請
4月26日には、郡山市の生活保護の窓口対応について要望書を提出し、市と懇談を行いました。懇談には郡山市生健会の5人と郡山地方労働組合総連合の草野芳明副議長などが参加。市からは生活支援課長と3人の係長が出席しました。
「守る新聞」4月9日号8面に掲載された三重県松坂市で生活保護利用者が電動自転車の使用・所有を禁止され、その後、撤回させた記事を紹介し、「なぜこのような誤った指導がなされたのかというと、担当者の『生活保護を受けている者が電動自転車に乗るのはぜいたく』という偏見・差別意識が根本にあるからだ」と指摘。「担当者の偏見・差別意識を払拭(ふっしょく)するためにも、市として『生活保護は国民の権利です』とのポスターを作り、掲示すべき」と求めました。
住宅扶助額が低すぎる問題については、「市としても低すぎると認識」と述べ、4月21日付で引き上げの要望書を厚労省に出したことを明らかにしました。
扶養照会については、本人の同意なく行っていないとし、車保有については「厚労省の通達にのっとり運用している。申請の要件ととられるような対応はしていない」と回答しました。
また、移送費が支給されることが分かれば、自動車の処分への抵抗感も多少和らぐのではないかと、移送費支給の実態を明らかにするよう求めました。
(2023年6月4日号「守る新聞」)